消して、奪って、きみだけを
「うーん、プリンやホットケーキなら費用を抑えて用意しやすそうだね。純喫茶のイメージにも合うし」
「あ、文化祭の話?」
「そうそう、今日はそのための偵察がしたくて」
そういえばホームルームのとき、メニューと内装については担当や係に関係なくアイディアを募る、というような話を委員長がしていたことを思い出す。
「な、なんだ。そうだったんだ」
恥ずかしいような、少しがっかりしたような複雑な色が心にさして苦笑した。
次の休日、一緒に出かけない? ────なんて誘われたから、勝手にデートだと思って舞い上がっていた自分の図々しさに気後れしてしまう。
「……なんて、それは建前。本当はただ羽衣とふたりで出かけたかっただけだよ」
「えっ」
「ここ、たまたま通りかかったときに見つけたお店だけど、羽衣が好きそうだなぁと思って。一緒に来てみたかったんだ」
そう言ってはにかんだように笑う叶人くんの表情は、きっとどのスイーツよりも甘い。
そんなふうに思ってくれたことそのものが純粋にうれしくて、晴れた心が満たされていく。
口を開きかけたそのとき、ちょうど彼の背後にあるガラスの向こうに表の通りが目に入った。
そこに見知った人物を見つけて驚いてしまう。
「涼……!?」
両手にビニール袋を提げている彼と、その隣には女の子の姿。
折がいいのか悪いのか、ふとこちらを向いた涼とガラス越しに目が合う。
彼もまた、ひどく驚いた様子で目を見張っていた。
(えっと……)
向かい側に座っていた叶人くんはわたしの隣へ、そしてそこへは代わりに涼が座り、一緒にいた子もその横へおさまった。
せっかくだから、なんて叶人くんが声をかけたけれど、何だか不思議な取り合わせで妙な居心地だ。
ふと、涼と一緒だった女の子に目を向ける。
どこかで見たことがあるような気がした。
その心当たりを探ろうとしたとき、叶人くんが涼ににっこりと笑いかける。
「デート中だった? 邪魔しちゃったならごめんね」
「ちげぇよ、そんなんじゃない」
彼はなぜか叶人くんではなくわたしに目をやりつつ全力で否定した。
それから、ばつが悪そうに続ける。
「俺のせいでこいつに怪我させたから……治るまで色々手伝うって約束したんだ。今日も文化祭の買い出しで付き添ってただけ」
「あ……それって、もしかしてあのときの?」
ようやくこの既視感にぴんと来た。
彼女は以前、学校までの道で涼がぶつかってしまった子だ。
あのとき向けられた鋭い眼差しまで思い出して、何だか自ずと身構えてしまう。