消して、奪って、きみだけを
ね、と同意を求めるように叶人くんがこちらを向き、思わずふたりを見やると涼と視線がぶつかった。
きつく眉を寄せ、険しいような憂うような表情を浮かべている。
初めて見る顔に戸惑いを覚え、言葉も熱も逃げていく。
美怜ちゃんがわずかに身を乗り出したのが視界の端に映った。
「本当?」
「うん。何て言うか、お互いをよく理解してそう」
彼女のまっすぐな眼差しを受け止めつつ、叶人くんがにこやかに答える。
それを聞いた美怜ちゃんの口元がほんのわずかに和らいだ気がした。
「……はぁ、聞いてらんねぇ」
うんざりした様子でため息をつき、天井を仰いだ涼は不機嫌そうに目を戻す。
「俺は全然、まったくそう思わねぇな。おまえらも、俺らも……お似合いなんかじゃねぇよ」
「じゃあ篠崎くんは誰と誰がお似合いだと思うの?」
「え? だから、それは────」
叶人くんに問いかけられた彼は、言いよどみながらわたしに目をやる。
その眼差しが読めずに困惑していると「あー、もう」と涼は席を立った。
「帰る」
そう言いながらテーブルにお金を置くと、荷物用のバスケットに入れていたビニール袋を掴む。
「ちょっと……」
「行こうぜ」
美怜ちゃんは突然のことに戸惑いを見せつつも促されるままに席を立った。
ぶっきらぼうな言い方ではあるものの、足を痛めて歩きづらそうな彼女を終始気遣っている。
「涼……?」
「また学校でな、羽衣」
それだけ残すと、涼は美怜ちゃんとともにお店を出ていってしまった。
◆
「……っと。ちょっと待ってってば」
背後から聞こえた声にはたと我に返って足を止める。
振り返ると、左足を引きずるようにして歩を進めた立原が追いついてきた。
「ああ……悪ぃ。歩くの速かったよな」
意識はずっと先ほどまでいたカフェに置き去りで、そこから早く離れたくて立原を顧みる余裕さえ失っていた。
それじゃ何のためにここにいるのか分かったもんじゃない。
置いていかないよう気を遣いながらペースを落として歩き出すも、なぜか立原はその場から動かなかった。
訝しく思って再び振り返る。
「どうした?」
「……好きなんだよね? あの子のこと」
どくん、と鼓動が跳ねた。
思いがけず核心を突かれてばか正直な反応をしてしまう。
「好きなんでしょ?」
誤魔化す余裕もなかったが、そうしたとしても手遅れだったように思う。
そう繰り返した立原は既に確信しているみたいだった。
「何で……」
「見たら誰でも分かります。篠崎くんだって、あのふたりの様子を見たら分かるでしょう? あなたが入り込む余地なんてない」
その言葉は刃となって俺の心を削いだ。
何か言おうと反射的に息を吸い、言葉が輪郭を持たないうちにそのまま吐き出す。
揺さぶられた感情のままに言い返したところで、無性に惨めになるだけだ。