消して、奪って、きみだけを
なんて、楽しそうに話す日和を思わず見つめる。
こうしてわたしが些細なことを気にしすぎたり落ち込んだりしてしまうと、決まって駆けつけてくれるのが日和だった。
太陽みたいな明るさと向日葵みたいな笑顔が、いつもわたしを安心させてくれる。
「……って、聞いてる? どうかした?」
「ううん、何でもない」
こうして救われることがこれまで何度あったことだろう。
改めて日和の気遣いに感謝しつつ、同時にマスコットのことを思い出して心苦しくなる。
もうあんなふうにわたしの勝手な甘えで振り回したくないし、傷つけたくもない。
日和を失いかけた不安を思い出すといたたまれなくなる。
最近になってようやく足元の線が薄まりつつあるような気がして、やっといままでみたいに笑えるようになってきた。
「羽衣」
────デザイン図を見て日和と話していると、ふと呼ばれて振り返る。
そこにいたのは叶人くんだった。
彼はいつも通り微笑みかけてくれて、その表情にいつも以上に安心してしまう。
「ひと段落ついたから、内装用の材料の買い出しに行こうと思って。一緒に行かない?」
頷こうとしたとき、ひょこっと日和が横から割り込んだ。
「買い出し? あたしも行く!」
そう言い出すなんて意外で少し驚いた。
日和は「いいよね?」と楽しそうに笑いながら確かめる。
「もちろん。あ、でも手芸部の子が“話したいことがある”って夏目さんのこと捜してたよ」
快諾した叶人くんだったものの、一転して困ったように眉を下げた。
日和は「あ、マジ?」と手元のデザイン図に目をやる。
衣装の相談なんかだったらそちらが優先だろう。
「買い出しは僕たちに任せて。行ってくるね」
そう言い残すと、叶人くんは自然とわたしの手を引く。
促されるままに踏み出したわたしは「またあとで」と日和に手を振って彼と教室を出た。
◆
内装の製作にあたって必要になりそうなダンボールは、学校にある分は早い者勝ちだ。
なくなる前にある程度確保しておこうと取りにいって戻ってくると、教室内はさらに浮ついた空気となって盛り上がっているように感じられた。
メニューの相談、衣装の相談、内装の相談、とそれぞれ概ね係ごとに輪ができていて何やら話し合っているみたいだが、中にはスマホでゲームをしていたり本を読んでいたりと無関係なことをしているやつもいる。
邪魔にならない位置に適当にダンボールを置いておくと、無意識に羽衣の姿を捜している自分に気づいてはっとした。
深い意味はなく、ただ気になっただけだが。
しかし、どこにも見当たらないし、さらには若宮の姿までない。
日和がひとり、教室の後方に佇んでいるのに気がついて訝しく思いながら歩み寄った。
「何してんの? 羽衣と若宮は?」