伝説の鬼姫さま、溺愛されています!〜地味子を演じて平穏に生きたいのに、最強のあやかし達が放っておいてくれません!〜

[side凛]六花様の実力

僕の主様は、あやかしなら誰もが憧れる伝説の方だ。

様子を見るに本人は、無自覚なようだけど……それでいい。
六花様の秘密を知っているのは僕だけで十分なのだから。

今日はいつも以上に早く目が覚めた。
これから毎日、六花様に会える。
それだけで、こんなにも世界が輝いて見える。

制服に服を通し、教室に向かう。
廊下を歩くたびに、あやかし達からジロジロ見られてしまう。
そして、ヒソヒソと何か喋っている。
耳を澄ましてみるに、内容はいつも通りだった。

「見ろ。柊様が、登校しているぞ」
「嘘だろ!中学時代、ほぼ学校に来なかったあの柊さんが!?」
「しかも、2日連続だとよ。これ、大事件じゃねぇ?」

はぁ…僕は、なんだと思われているんだ。

たしかに、最近まで不登校の問題児として学園生活を過ごしていたわけだが……普通の生徒なら2日連続通うのは当たり前だ。
それでこんなにも大袈裟に驚かれるとは、昔の僕は相当だったんだな。

しかし、これからは毎日登校するようになるだろう。
理由はもちろん、六花様がいるからだ。

好きな人を一番近くで守るためにも登校は必須だ。
それに、僕が不登校だったことを知られるのも嫌だ。
格好悪いところを、見られるのは恥ずかしすぎる。
何よりも、心優しい六花様に心配をかけてしまうに違いない。

だから、こうやって嫌いだった学校も登校しているんだ。
すべては、六花様のため。
それ以上のなにものでもない。

教室に着いてからも、先程、廊下で聞いたようなことが聞こえる。
しかし、僕の目には六花様しか写っていなかった。

ボサボサの黒髪に、顔を隠す大きなメガネ。

正直、昔とは似ても似つかない姿だけど……それでも、僕には可愛く見えてしまう。

「六花様!おはようございます。昨日ぶりですねっ」

僕はテンションが上がっているせいか、昔なら出すこともなかった声が出てきた。

あまりの豹変っぷりに、あかやし組は目を見開いて凝視してくる。
中学時代までなら、それだけで睨みつけていただろうが、今は耐える。

六花様の前でそんな姿を見せれるわけない。
怖い思いをさせたくないのもあるが……なにより、失望されたら僕は一生立ち直れない。

だから、我慢だ。

それからというもの、六花様と話を続ける。

コロコロと表情が変わる六花様。
あまりの可愛らしさに、僕の表情筋は緩みきっている。

自分でも異常事態だなっと正直思う。

僕は、昔から表情筋が死んでると言われるほど感情が顔に出ない。
ましてや、こんな人前で笑うことは生まれてこの方一度もなかった。

それを、変えてくれたのは……間違いなく六花様だ。

僕に、感情を、初めてを与えてくれる。

こんな人、きっと生涯を通しても六花様だけ。
だから、僕は彼女を好きになってしまったんだろうな。


そんなことを考えていると、チャイムの音が鳴り、このクラスの担任が現れた。
最悪なことに、僕はそいつのことを知っていた。

現代最強の陰陽師と謳われている天敵。
僕とは、ある意味因縁の相手とも言える。

運が悪すぎる……よりによってあいつが担任だなんて。

まぁ、いいや。
僕には六花様がいる。
その事実だけで十分だ。

六花様のために通うんだと思うと、嫌な気持ちが和らいだ気がした。

それからすぐに、一限目の授業が始まった。
教科は古典。

正直、簡単すぎてあくびが出そうになる。
隣の六花様を見ると、真剣に聞いてノートを取っていた。
昔から変わっていないその様子に、頬が緩むのを感じた。

はぁ……可愛い。
僕の主は、何をやっていても可愛い。

六花様を見て、癒されながら授業を聞いていると、先生が六花様を当てた。
問題は、竹取物語に出てくる文の意味を答えるというもの。

このレベルなら六花様は、すぐに答えられるだろう。
なにせ、彼女はずば抜けて頭がいいのを知っている。
前世ではその知識を武器に、多くのあやかしたちを救ってこられたのだから。

しかし、世の中には馬鹿な奴がいる。
六花様が当てられたのを見て、クスクスと笑い、馬鹿にしている奴がいた。

その様子を見ただけで、イラッとなり、すぐさま黙らせようかと思ったが一歩手前で踏みとどまる。

僕が手を出したら、逆に六花様が危ないと分かったから。

きっと、アイツラは僕が六花様と仲良くしていることに嫉妬している者たち。
今、僕が守ってしまえば……僕がいない間に六花様に危害が及ぶかもしれない。

もちろん、そんなことはさせないし、六花様程なら返り討ちにしてしまう気がするが……リスクは出来る限り減らしておきたい。

それに、今から六花様の実力を知ることになるんだ。
見せつけてやったほうがいいに決まっている。

案の定、六花様は完璧な回答を答えた。

そんな六花様を見た奴らは驚いた様子で間抜けな顔をしていた。
内心、ざまぁみろとなったのは僕だけの秘密にしておこう。

「六花様、流石です」

授業中ということもあり、小さな声で褒める。
すると、照れくさそうに「ありがとう」と伝え、再び黒板を見る。

愛らしい笑顔に、鼓動が早くなった。
僕は、笑顔一つだけで心を鷲掴みにされてしまったようだ。

相変わらず、僕の主は世界で一番可愛らしい方だ。

これからも、僕は六花様に何度も恋をするだろう。
その事実に、苦笑いするのだった。






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