朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない
体育館に着いた。キュッキュッと言う靴底の音とか、すえたような匂いとか全部が僕の心を震わせる
「新、もしよかったら、ちょっとだけ有希と二人にしてくれないか?」
「解りました。先にねぇちゃんの車戻ってますね」
「あぁ」
新は何も言わずに、外に出た。
「なぁ有希」
「なぁに」
本当はここに来たかったんだろ。
いや僕を来させたかったんだろ。
ちゃんと分かってる。
「バスケ、できるかな」
「片手なら。ほら」
「おっと」
僕は松葉杖を1つほおり投げて代わりにボールを受け取った。
そして思い切りゴールに向けて投げるけれど、足に力を入れられないから到底ゴールまで届かない。
「ねぇ、私が後ろから貴方を抱きしめて受け止めてあげるから、思い切り投げてみて」
「……やってみる」
松葉杖を両方落とす代わりに有希が背中からぎゅっと支えてくれた。
そして思い切りボールを投げた。
力が受け止めきれず同時に倒れると、下になった有希の短い声が同時に聞こえた。
ボールはゴールを捉えた。
「大丈夫? 怪我してないか?」
「さすがエースだね」
松葉杖を持って手渡してくれる有希。
それを受け取れない僕。
「……有希……」
「どうしたの?」
「……僕、生きたい! まだ生きていたい」
思わず泣きながら有希を抱きしめた。
温かくて心臓はドキドキしていて、細くてこの世のものの中でいちばん可愛い有希。
「それ、聞きたかった」
「え?」
「だって、湊月は緩和ケア科に入院してたから。ぽろっと君のこと知ってしまったの。始めからすべての治療を拒否してるって」
「だから同情で近づいたのか」
「それは違うって。いつか分かるから。バスケでゴール決める湊月、最高にカッコよかった。ただそれだけ」
また涙が一筋流れた。
有希はハンカチでやさしく拭いてくれた。
まるで女神のように優しかった。
「新、もしよかったら、ちょっとだけ有希と二人にしてくれないか?」
「解りました。先にねぇちゃんの車戻ってますね」
「あぁ」
新は何も言わずに、外に出た。
「なぁ有希」
「なぁに」
本当はここに来たかったんだろ。
いや僕を来させたかったんだろ。
ちゃんと分かってる。
「バスケ、できるかな」
「片手なら。ほら」
「おっと」
僕は松葉杖を1つほおり投げて代わりにボールを受け取った。
そして思い切りゴールに向けて投げるけれど、足に力を入れられないから到底ゴールまで届かない。
「ねぇ、私が後ろから貴方を抱きしめて受け止めてあげるから、思い切り投げてみて」
「……やってみる」
松葉杖を両方落とす代わりに有希が背中からぎゅっと支えてくれた。
そして思い切りボールを投げた。
力が受け止めきれず同時に倒れると、下になった有希の短い声が同時に聞こえた。
ボールはゴールを捉えた。
「大丈夫? 怪我してないか?」
「さすがエースだね」
松葉杖を持って手渡してくれる有希。
それを受け取れない僕。
「……有希……」
「どうしたの?」
「……僕、生きたい! まだ生きていたい」
思わず泣きながら有希を抱きしめた。
温かくて心臓はドキドキしていて、細くてこの世のものの中でいちばん可愛い有希。
「それ、聞きたかった」
「え?」
「だって、湊月は緩和ケア科に入院してたから。ぽろっと君のこと知ってしまったの。始めからすべての治療を拒否してるって」
「だから同情で近づいたのか」
「それは違うって。いつか分かるから。バスケでゴール決める湊月、最高にカッコよかった。ただそれだけ」
また涙が一筋流れた。
有希はハンカチでやさしく拭いてくれた。
まるで女神のように優しかった。