朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない
そうして有希は毎日見舞いに来てくれたけれど、毎日優しい訳でもなかった。

「ねぇ。僕たちはどっちが不幸だと思う?」聞くと、
「それで勝っても、私は幸せじゃない」と返す。

「じゃあ何が本当の幸せ?」
「本当の絆をつくること」

『バカな湊月に星の王子さまの言葉をあげるわ。でももしきみがおれを飼い慣らせば、おれたち二人は互いを必要とするようになる。きみはおれにとって世界で一人の存在になる。おれはきみにとって世界で一匹の存在になるんだ』


「じゃあ孤独じゃないのが幸せ?」
「うん。私は人はひとりきりでは生きていけないと思う」


こんな哲学的な会話をしたと思ったら。
次の日には喧嘩したりもした。

「治療法があるっていいね」

寝たきりの有希の家族のことだろう。

でも僕は

「お前に何がわかるんだよ!」ときれる。

「そうだね。ほんとうだ。ごめんね」

珍しく有希から謝ってきた。
何故か切なくなる。
有希は手作りのお守りを渡す。

つらくなったら、ひらくようにと言われる。

「こんなに頑張ったんだから、手術、成功するわ」
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