朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない
ICUで朝日さんを呼んでくださいと頼むと、ひとりの母親が出てきた。

「あなたが朝日有希さんですか?」

「そうです」

朝日有希は母親の名前だった。

「じゃあ、あそこで寝てる子は?」

「あなた、もしかして湊月くん?」

「そうです」

「いつもあの子が話して笑ってた子だわ」

お母さんは僕を抱きしめた。

「あの子に会いに来てくれてありがとう……でもあの子はもうすぐ……」

お母さんが泣いた。

「会ってあげて」

僕はすぐ側にやっと来た。

「やっときたぞ、うそつきさん」

僕は手を握った。

「ううっ」

「なんの生きてる意味も根拠もない、治療法ももうない。僕だってやさぐれてました。でも生きてる。この人の未来を馬鹿みたいに信じている人が1人くらい居てもいいじゃないですか」

母親が言う。

「この子の名前ね、”未来”っていうの」

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