朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない
手術が終わり、僕は片足を失った。
だが、生きていた。
有希は見舞いに来なくなった。

リハビリが始まり、足はなく、抗がん剤で髪は抜け落ち、元の僕という面影はすっかりなくなってしまったから、関わりたくなくなったのだろうか。

「もういいじゃん……」

このまま、忘れてしまおう、そう思った。
けれど衝動のまま、走り出す。
転びながら、何度でも立ち上がった。

欠けた足で、もう失ったものは戻らないけど。

その代わり。

君の好きなコトバ、もの、なんでも差しだす覚悟で。

もっとわがままを言ってくれよ。

ちゃんと告白に答えてくれよ。

朝日有希の家族がいるはずの病棟に僕はついた。
スタッフステーションで『朝日有希なんて人はいない』といわれるが、朝日さんというと、ICUを案内された。
< 34 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop