朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない
普通、初対面でそれ言う?って、やっとその子の瞳をまともに見つめ返すとびっくりした。
何だこの子、とんでもなくかわいい。
サラッと伸びた黒髪に、両サイドは三つ編みになっている。
まるで、ガラスのビー玉みたいに曇りの無い瞳で僕を見ている。
だから素直に言い返すことにした。
「多分、死ぬ」
「そう。これ、置いとくわね」
バスケットボールをそっと脇に戻してくれた。
「ねぇ、君。名前は」
「名前、名前かぁ……? 有希、かな」
「ぷっ。名前言うの迷うとか認知症かよ」
「そう? そうかもね」
「有希、ボール、拾ってくれてありがとう」
「貴方の名前は?」
「湊月、高田湊月」
「湊月ね、宜しく。私ここに入院してる家族がいるの。これからはあなたのお見舞いにも来ていい?」
「なんで? 僕が死ぬから? 可哀想だから? そう言うのなら要らない」
「違うわ。この病院だいたい老人しかいなくて。ただ暇してたから」
うわ、そんなの普通言うか。
でもその真っ直ぐさが、逆に心地よかった。
「うん。それなら僕も暇は暇だ」
「でしょう? お互いちょうどいいわね」
だから、僕達は軽く笑って、友達になった。
窓からは夏の夕日が差し込んで、有希のことをオレンジに照らしていた。
1話・[完]
何だこの子、とんでもなくかわいい。
サラッと伸びた黒髪に、両サイドは三つ編みになっている。
まるで、ガラスのビー玉みたいに曇りの無い瞳で僕を見ている。
だから素直に言い返すことにした。
「多分、死ぬ」
「そう。これ、置いとくわね」
バスケットボールをそっと脇に戻してくれた。
「ねぇ、君。名前は」
「名前、名前かぁ……? 有希、かな」
「ぷっ。名前言うの迷うとか認知症かよ」
「そう? そうかもね」
「有希、ボール、拾ってくれてありがとう」
「貴方の名前は?」
「湊月、高田湊月」
「湊月ね、宜しく。私ここに入院してる家族がいるの。これからはあなたのお見舞いにも来ていい?」
「なんで? 僕が死ぬから? 可哀想だから? そう言うのなら要らない」
「違うわ。この病院だいたい老人しかいなくて。ただ暇してたから」
うわ、そんなの普通言うか。
でもその真っ直ぐさが、逆に心地よかった。
「うん。それなら僕も暇は暇だ」
「でしょう? お互いちょうどいいわね」
だから、僕達は軽く笑って、友達になった。
窓からは夏の夕日が差し込んで、有希のことをオレンジに照らしていた。
1話・[完]