愛は重くて結構です
「お疲れ様です」

乾いた革靴の音が辺りに響いた。
夜の都会の街は、昼間に負けず劣らず人通りが多い。
疲れ果てた人間が羽目を外して遊ぶ繁華街なら尚更だ。
この男が歩くだけで張り詰めるような空気が冷たく、背筋から冷や汗が滲んでしまう。

「(うるせぇな…少し静かにしろ)」

派手に着飾った女達が、奥で騒ぎ立てている。
かっこいいだの、好きだの、抱かれたいだの。
いちいち叫ばなくとも、この男からしたら散々言われ慣れた言葉だろう。
俺は頭を下げたまま、この男の機嫌が下がってしまわないかハラハラとしていた。

「若様っ!」

「あっ…おいっ!」

人だかりの隙間から飛び出してきた人影に手を伸ばすも間に合わず、その影は迷わず男の腕へと絡みついた。
見ただけで分かる。承認欲求の強い女だ。
鼻がもげそうだ…。
きつい香水の匂いに顔を歪めてしまう。
不自然なほど膨らんだ胸元を強引に押し付け、女は男の顔を見上げた。
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