この恋、上方修正銘柄です!

 まさかの質問攻めは、欧米的コミュニケーション?
 なんだかイメージが違うというか、なんというか……
「……それ、セクハラです」

 え、とフリーズする九条にハッとする。
「あ!いえ、すみません!実は、九条さんが知人に似ていて、何だか急にその人と話している気になってしまって……失礼しました!」
 九条は特に気分を害した風もなく爽やかに微笑んで、
「いや、こちらこそ気を悪くさせてゴメン」

 こうなったらついでにと、
「つかぬことをお尋ねしますが……九条アーヴィングさんって、本名ですよね?」
「うん。偽名でアベルに就職なんて出来ないし。この銀行に来る前にもされたよ、身元調査。しかも入念に」
「では、関西弁を話す同世代の従兄弟とか、生き別れになった双子とかは……」
「いないけど」
「ですよね……」

 些細な質問をセクハラだと喚き立て、不可解な質問をする。変な女決定だ。
 溜息を漏らした錦の隣、九条がうんと伸びをして、
「さ、そろそろ仕事に戻ろうかな。この週末までに、主要取引先の財務状況には一通り目を通しておきたくて」
「主要取引先だけでもかなりの数ですよ」
「そうだけど、せっかくの機会だから。そうだ、セクハラついでに。その知人って、元彼とか?」
「違います。寧ろ、苦手でした」

 即答した錦に、そう、と笑った九条がゴミ箱に投げた空のカップは、至近距離にも関わらず外れた。

< 10 / 162 >

この作品をシェア

pagetop