この恋、上方修正銘柄です!

「高辻、ちょっと良いか?」
 融資課長の乾に呼ばれ、デスクに向かう。課長の傍には何故か九条が控えていて。
「頓挫したままになってるタワープロジェクトがあっただろ。ほら、空港の新飛行ルートで中止になったヤツ。その予定地を九条君が見たいそうなんだが、案内してくれないか」
「構いませんが、午前中は金消が2件入っているので午後からで良いですか」
「キンショウ……ああ、金銭消費貸借契約のことか」

 その時、住宅メーカーの担当者と若い夫婦が入って来た。
「おはようございます高辻さん。本日は宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「同席しても良いかな」
「私は構いませんが……」
 室長とは名ばかりで、実は大した仕事もなく暇なのだろうか。銀行は特殊な業種だ。一般企業の常識が通用しないことも多々ある。コンサルタント会社ではハイクラス層だとしても、ここで通用するとも限らない。

 顧客を商談席へ案内し、名刺を渡して挨拶をしてから契約を始める。契約書や委任状、同意書等々、各書類の説明をしながら署名と捺印をしてもらう。
 記入漏れや印鑑の確認のため、書類一式を上司のチェックに回してオッケーを貰えば終了だ。
「本日は大変お疲れ様でした。ちなみに給与の振込みはどちらに指定されていますか」
「信用金庫だけど」
「住宅ローンの引き落としが始まるので、当行に変更いただければと思いまして。公共料金や税金などの振替口座も併せて指定いただくと、自動車ローンの金利やATM手数料の優遇が受けられます」
「実はちょうど、車の購入を考えていて」
「こちらがパンフレットになります。担当の伏見に連絡するよう伝えておきますね」

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