この恋、上方修正銘柄です!

「お先に失礼しまーす」
 18時過ぎ。預金課の女性行員が次々に帰って行く時刻。

 一息つこうと給湯室の喫茶スペースでカフェラテを淹れている時、隣のサーバーの前に立つ人の気配がした。
「おつかれさま、高辻さん」
「あ……おつかれさまです」
 
 髪色や髪型こそ違うものの、キリッとした眉に凛とした二重、すっと通った鼻筋といい、間近で仰ぎ見る横顔も、不思議なくらい九条吏によく似ている。

「預金課の退社時刻は、いつもこれ位?」
「定時の17時に帰れる事は稀です。それでも昔に比べると働き方改革で早く帰れるようになった方です」
「高辻さんはまだ帰らないの?」
「はい。課長決裁まで回しておきたい案件があるので」 

 九条は壁と一体型のカウンターテーブルに軽く背を預け、コーヒーを飲みながら、
「さっき預金課の堺課長と一緒に金庫室に入ったんだ。札束が山積みで驚いたんだけど、札束の扱いが淡々としてるっていうか雑っていうか。寧ろそっちの方がびっくりしたよ」
 人見知りしない気さくな性格らしい。そんなところも九条吏を彷彿とさせる。
「私も最初は驚きましたが、今では商品としか思えなくなりました」

「ところで、企業向け融資は高辻さんが担当?」
「中堅企業は私と2年先輩の川端さんが。私は住宅ローンも担当しているので、割り当ては川端さんの方が多いです。大口先は乾課長と課長代理の紫野さん。個人事業主や金融公庫は後輩の大原君と大宮君が担当しています」
「在学中に税理士資格を取得したとか。すごいね」
 外資系のハイキャリアは情報収集が得意らしい。
「暗記が得意なだけです」

「仕事はいつも遅くまで?」
「20時頃には帰るようにしています」
「それだと平日はデートする時間もないね。週末ってインドア派?それとも外に出かけることが多い?連休とかまとまった休みがあったら、行きたい場所ってある?」
 
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