この恋、上方修正銘柄です!

 午後のミーティングが終わるのを見計らったように、乾課長が九条の元にやって来た。
「申し訳ないんだが、今日だけ高辻に融資課へ出戻ってもらえないだろうか。川端がリフレッシュ休暇で休みなのと大原が研修に行っていて、3人じゃ回らないんだ」
 わずか半日で、乾はすっかり老け込んで見えた。
「こっちは良いから行って来な」
「でも、良いんですか」
「急ぎの案件の進捗だけ聞かせて。半日くらい4人でなんとかするから」
 
 融資課に戻るなり、待ってましたと言わんばかりに次々と仕事が回って来る。
 担保不動産や株券の現在価格の算出し直しをしていると、
「すまないついでに、土日のどっちか出られないか?」
 それを聞いていた紫野が、
「課長、高辻さんは駄目ですよ!週明けが選抜試験だから」
「ああ、そうだったな。いや、悪かった。こっちは大丈夫だ」
 とはいえ、どの面々も疲労と焦りが濃い。自分が関わった案件も多く、今は担当が違うからと知らん顔もし辛い。


 翌日の土曜。午前中だけなら、という条件で承諾したものの、何だかんだと長引いて、時計を見ると15時過ぎ。気がつけば昼食も食べずにノンストップだった。

 帰り支度をしていると、九条がそっと近づいて来て、
「俺も帰るしメシ行こ」
「九条くんの用事は済んだの?」
 今朝来たら、午前中はアベルの会議が入っていたはずの九条も何故か会社にいた。
 まあな、と答えながら、振動するスマホの赤いボタンをスライドする。
「着信拒否?」
「ああ、留守電に繋がるから大丈夫。さ、帰ろ帰ろ」
と、渉外席から声が上がる。
「九条さん、高崎専務から電話、内線1番です」
「チッ、スマホ無視してたらこっちにかけて来よったか。無理や言うてんのに、オッサン粘着質すぎるやろ。あーもう、おらんって言っといてくれたらエエのに!」
 錦にピシッと指差して、
「ええか、しっかりメシ食えよ。で、今日は早く寝ろ」
「はいはい」
「ハイは1回。目の下のクマ、ちゃんと直して来い。面接は見た目も肝心やねんから。寝てるかどうか電話するからな」

 その電話は取るべきか取らないべきかどっちが正解なのか、そんなことを考えながら、店を後にした。



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「代手」は関西弁的にはそうはならないので、一度も間違えられたことはありません()

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