この恋、上方修正銘柄です!
 
 契約を終えた顧客を見送ったすぐ後に、渉外課員の伏見が慌しく駆け込んで来た。
「高辻さん、終わっちゃった?ごめん、オレが担当のお客さんだったのに同席できなくて。給振と口振、どうだった?」
「全部うちに変えてもらえました。そっちは伏見さんの成績にはなりませんが、オートローンを具体的に検討されていたので一通り説明しておきました。月々3万までの返済計画で申し込んでもらえれば、まず審査は通ると思います」
「マジで?助かるー、今月ノルマきつかったんだ!電話してみる、ありがとな」
「それと、昨日預かった他行からの住宅ローン借り換えの件、申込金額が今の残高と同額になっていましたが大丈夫ですか」
「どうして?」
「借り換えには諸費用がかかります。保証料、抵当権を一旦抹消して設定し直す登記費用、印紙代など、ざっと50万円ほど。融資金として口座に振り込まれるのは諸費用が差し引かれた額なので、今のローンを返済するには足りず、自己資金が必要です」
「やば、追加で50万要るとか言ったら怒られるとこだったよ。助かった、また教えて」 

 伏見がバタバタと出て行った後、一連のやりとりを見ていた九条が、
「高辻さんって優秀なんだね」
「普通です。もう長いですから」
「いや、その普通がなかなか出来ないんだよ」
「そんなことはありません。色々失敗して今があるだけです」
 何が面白かったのか、九条はククッと短く笑った後、ごまかすように咳払いをして、
「じゃあ午後からヨロシク」
と片手を軽く上げ、自分のデスクに戻って行った。
< 12 / 36 >

この作品をシェア

pagetop