この恋、上方修正銘柄です!
「置いていけるワケ、ないやろ」
手首を取られ、驚いて目を開ける。目と鼻の先に、九条の顔があって。
え、と思った次の瞬間、唇で言葉の続きを封じられていた。目を開けたまま呆然としているうちに、唇は直ぐに離れた。けれど、九条の顔は近いままで。
「アカン、止まらへん……」
欲情に濡れた瞳。少し掠れた低い声で発せられた言葉の意味が、ジワジワと全身に回る。
ギシ、とベッドに九条の体重が掛かる。ネクタイを緩める所作にどうしようもなく胸がときめく。
左手が濡れた頬にそっと添えられ、再び九条の顔が迫ってくる。考えがまとまらないまま、それでも受け入れるべく目を閉じた。
今度は少し焦らすように唇が重ねられる。吸ったり離れたり、味わうようなキスに体の力が抜けていく。
やがてぬるりと侵入してきた舌に、呼吸と思考を奪われる。ベッドに縫い付けられた手に絡まる長い指を、ギュッと握り返した。
「……ン……ぁ、……」
乱れる吐息と共に自然と声が漏れる。
自分のものではないような甘い声。煽られるように、更にくちづけは深くなる。キスだけで溶けそうだ。
ちゅっと音を立てて唇が離され、乱された息を整える。
「高辻って、感じやすい?」
「……どうしよう」
「ん?」
「こんなの、知らない……」
「ああもう〜、ココでそういうこと言うかなあ……」
がくっと脱力して俯いた九条に、声をかけようとしたものの、
「んンッ……!」
更に深く甘く口づけられ、強い快感の波に囚われる。もう何も考えられない。
点滴で繫がれている腕のことも忘れ、広い背中に縋り付く。その拍子に、指に繫がれていたパルスオキシメーターのコードが外れ、ピーッピーッと高めの断続音が部屋に鳴り響いた。
「わ!これどこに差したらええねん!?」
「そこ!じゃなくってこっち?」
コンコンとノック音がして、返事をする前に白衣のドクターと看護師が飛び込んで来た。
「どうかしましたか!……って、大丈夫そうだね」
その若い医者は錦を見てにっこりと笑った。
「高辻さん、久しぶり」
「さ、佐藤君……!」
驚く錦の隣、九条は複雑な表情で二人を見ていた。