この恋、上方修正銘柄です!

「本当は私、九条くんから連絡が来るの、ずっと待ってた」
「え?」
「落ち着いたら何か送ってくると思ってた。けど、1ヶ月経っても2ヶ月経っても何の連絡もない。親しくなったつもりでいたけど、そんな程度だったんだって思った。1年が過ぎた頃、九条くんは向こうでやりたいことを見つけたんだと思った。もう会うこともないんだと思った時、分かった。高校生活が楽しかったのは九条くんがいたからで、私はずっと九条くんのことが好きだったんだ、って。……ううん、分かったというより、認めたという方が正しいのかもしれない」

 応えてもらえるなんて思ってない。
 ただ、知っておいて欲しい。自分の中で、九条がどれだけ大きな存在だったかを。 

「九条くんが経営者になったら私を顧問税理士にしてくれる。そんな冗談ですら、私にとってはお守りだった。いつかまた会える。不確かだけど、約束みたいに思えたから」

 海からの強い風が街路樹を揺らしながら通り過ぎていく。 

「……卒業式の日。俺、小川にフラれたって話したん、覚えてる?ホンマは俺からやねん。別れ話、切り出したんは」
「それ、つい最近、綾乃から聞いた」
「ああ、この前店に来とったな。子ども連れて」
「気づいてたの?」
 まあな、と答えて少し笑うと、
「お互い遠距離には向いてない。それを理由にしたけど、ホンマは違う。好きな子ができたからや。……いや、ちゃうな。正確に言うと、その子の事を好きなんやって認めざるを得んかった。けど結局、何も言わんままアメリカに行ってしもた。その子には好きなヤツおんのも知ってたし、そいつが俺とは全然違うタイプやったから、絶対無理やろうって何となく諦めてたんもある。俺、あの頃、ええ加減なことばっかしてたから」

 綾乃の予想の半分は当たっていた。
 頭に浮かんだのは、サッカー部のマネージャーだった子。いや、交友関係が広い九条のことだ。バイト先とか他校とか、自分が知らない子なのかもしれない。 

「その後も全く連絡せんかった。携帯なくしたとか小川のこととかそれっぽい理由は色々あるけど、今思うと単にビビってただけかもしれん。勝手な話やけど、向こうから本気で連絡取ろうと思えばできるやろとも思ってて。あー俺ってその子の中でその程度やったんやなあって虚しくなった。あっちで付き合ったりもしたけど、やっぱりどの子とも長続きせんくて。ずっとその子ことが、残ってたから」


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