この恋、上方修正銘柄です!

 こんなにも九条に想われている、幸せな彼女。
 出来るだけ明るい口調で、
「九条くんのことだから、帰国してから彼女と会ったんでしょ?」
「勿論、会ったで」

 ずきん、と胸が疼く。
 けれど、見届けなくてはいけない。自分の、報われない恋の行方を。
 そうしないと、卒業式の日から動けないままだ。

「10年越しの想いは叶いそう?」
「さあな」
「もしかして既婚者だったとか、それともすごく変わってたとか」
「独身の彼氏ナシやったで。けど確かに変わってたな。髪が伸びてたし、化粧してるの見たんも初めてやったから、俺、ちょっとドキドキした」
「なら、どうして何も言わなかったのよ」

「言わんかったんちゃう。今から言うんや」
「……え?」
 いきなり抱きしめられ、息を呑んだ。

「ち、ちょっと、なに……!ここは日本で、ハグなんてスキンシップ、今も存在しないから……!」
「知ってるわ、それくらい」
 強められる腕の力にくらくらする。

「俺、高辻が好き。めっちゃ好き。高校の時から、ずっと好きやった」

「う、うそ……」
「ウソでこんなこと言うか、アホ……。大体、この間からの流れ、俺のこと何やと思てんねん」
 耳元で、くぐもった声がする。
「だ、だって……私なんか、九条くんが好きになる筈ないもん……」

 九条は腕の力を少しゆるめ、それでも至近距離で錦を見下ろしたまま、
「正直、昔は俺もそう思ってた。そやから小川とか、そういう子らと付き合った。けど、なんか違う。メイクが上手くてノリがええ子も良いけど、勉強ばっかりしてて愛想もクソもなくて、そやのにツッコミはキレッキレで。かと思えばマジボケかましてきたり、文句も言わんとクラスの雑用やったり何ならこっそり花壇の手入れまでしてる。不器用やけど嘘のない、そんな子といる時の方が素の自分でいられる。課題を口実に、わざわざ会いに行ったりとかして。ああ、これが好きってことなんやって」
 

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