この恋、上方修正銘柄です!

「俺、高辻の昔の写真見たい。大学の時とか、銀行入った時のとか」
「元カレの写真見る?」
 タップすると目をぎゅっと閉じて、
「それはマジでやめて。いや、気になるな……え、沢山おるん?」
 恐る恐る目を開けた九条だったが、
「なんや、これ銀行の社員旅行の集合写真やん」
「本店営業部に来てすぐの頃」
「って、まさかココに元カレが!?」
「ふふっ、そんなのいないから。私、どこにいるか分かる?」
「高辻見っけ。……え、これ、京極さん!?髪ふっさふさやん!俺も銀行勤めてたらああなんのかな、コワっ」

 最後列の右端にはもうこの世にいない上司も写っていて、胸が痛んだ。

「しっかしなかなかのブラック企業やな。労基署に誰も告発せえへんのが不思議やわ」
「時間通りにつかない残業代、休日も出勤若しくは地域のボランティアへの強制参加。最初はおかしいと思ったけど、いつのまにか慣らされてる」
「やりがいという報酬で、過酷で理不尽な労働も受け入れてしまう。いわゆるやりがい搾取ってヤツやな。……そういや融資課で自殺した行員がいたって聞いたけど。歓迎会の時に川端が言いかけてたん、それやろ?」

 少し迷ったが、写真を指差して。
「3年前の春、私と同じ日にこの本店営業部に異動して来た甲斐さんっていう人。最年少で融資課長に昇進して、最初の店がここだったの。けど、当時の久我っていう部長がパワハラの塊みたいな人で、職場の空気も最悪で。特に甲斐課長を目の敵にしてた。金融庁の検査で重大な指摘が入った時も、全部甲斐課長に罪や責任を押しつけて……。翌年の冬、課長は亡くなったの」
 声がかすれた。震える指先を九条がそっと握ってくれる。
「直接の死因は、処方された抗うつ薬のオーバードーズ。故意か事故か、今となっては分からない。でも銀行は自死という解釈にこだわった。その方が、会社や周囲の責任を問われずに済むから。……連日の残業に休日返上の仕事。過労とパワハラが原因なのは明らかだったのに、上層部は箝口令を敷いて、労災認定すらさせなかった」

「……それは酷いな」

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