この恋、上方修正銘柄です!
 
「その頃、銀行で十数万件もの顧客データ漏洩が起きたの。破綻懸念先や要管理先……いわゆる延滞先やリスク債権が載った特殊な名簿で、それがダークウェブで取り引きされていたらしくて」
「金に困ってる人間は特殊詐欺や闇金の格好のターゲットやからな。利用価値の高い名簿として高値がつく所以や」
「甲斐課長が亡くなった後、彼の机の引き出しからその書類の一部とUSBメモリが見つかったの。うつ状態になった課長がやった、ということにして銀行は幕を引いた。けど私は、甲斐課長は無実だと思ってる」
「……なんでそう思うん?」
「犯罪行為をするような人じゃないから。……といっても仕事以外の話をしたことは殆どないし、プライベートもよく知らないんだけど……」

「うん……高辻の勘は、きっと正しい」
 九条が目を見てそう言ってくれたから、救われたような気がしてほっと息をつく。

「それに、その証拠品が出て来る直前に課長のデスクを整理したのが私だったから。その時は何もなかったのにおかしい。久我部長に説明したけど、見落としたんだろうって相手にしてもらえなかった。データのエクスポート権限があるのは課長代理以上だから彼に違いないって。おそらく部長は甲斐課長の死に自分が関与している自覚があって保身に必死だったから、早く終わらせてしまいたかったんだと思う」

 ぎゅっと握りしめた掌には爪が食い込むほどの力が入っていた。
「確かに私の見落とした可能性もゼロじゃなかったし、課長が無実なら、いずれ真実は必ず明らかになる。そう思ってた」
「……けど、そのまま闇に葬られた」

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