この恋、上方修正銘柄です!
「ちなみに、高辻は誰が怪しいと思ってたん?」
「久我元部長が一番怪しいけど……すごく機械に疎い人だったの。USBメモリの使い方も分かってなさそうだった」
「マジか……ええんか?店のトップがそんなんで」
「他部署の人たちは除外していいと思う。仮に机のスペアキーの保管場所を知ってたとして、課長の鍵が何番なのかまでは分からない筈」
「データを持ち出せる権限で考えると……部長、次長、渉外課長とその代理。預金課は代理がおらんから預金課長のみ、それに融資課長代理。つまり、合計で6人に絞れるってことか」
スマホを取って文書フォルダを開く。背後の九条が錦の肩に軽く顎を載せながら、
「これって……当時の同僚らの名前?」
当時営業部に所属していた全員の氏名と略歴、USBメモリ発見時の動向、および現在の勤務店や状況について、人事異動のたびに更新を続けている。7月1日付の分も反映済みだ。
せめてもの、今の自分にできること。
「管理職以外の可能性もないとは言い切れないから」
「この人?高辻の天敵やったんは。もう退職してるんか。俺的にはもうコイツが犯人でええんやけど……ああでも、最後に出勤してきて真っ先に帰ってたなら、小細工するヒマないやん」
「妊娠して辞めたんだって。後で真由子から聞いたんだけど、ずっと不妊治療してみたい。家庭を最優先にして割り切って仕事をするのも、それはそれで正しい選択だと思う」
「それでもその価値観を他人にゴリ押す時点でアウトやろ。俺の高辻に嫌がらせするとか許せん。イジメていいのは俺だけやのに……痛っ」
Tシャツの裾から侵入しかけた手の甲をつねっておいた。