この恋、上方修正銘柄です!
「あと、これ。思い出せた限りの甲斐課長と部長のやりとりを時系列にまとめたもの。……当時人事部に出そうとしたら、真由子にクビになりたいのかって止められて。内部通報制度はあるけど身元を特定されて会社に居られなくなるのがオチだし、録音があるわけでもないから証明するのは難しい、って」
結局、真由子の忠告に従った。
「私が昇進して権限を持てれば、もっと出来ることがあるかもしれない。甲斐課長は帰って来ないけど、いつか、濡れ衣だけでも晴らせたらって。その日までは何があっても頑張ろう、って」
「……それで、偉くなろうと思ったん?」
突然、九条に背中から強い力で抱きしめられた。首元に顔を埋めているので表情までは分からない。
「……俺、高辻のこと、好きになって良かった。……っていうかもうめちゃめちゃ好き。好き過ぎて死ぬ」
いつもの軽口かと思ったが、くぐもった声が、心なしか震えてるような気がして。
「……九条くん、泣いてるの?」
そういえば昔、絵本の読み聞かせで号泣していたことを思い出す。こう見えて、意外と感動屋だったりするのだ。
こんな素敵な人が自分のことを好きだなんて、前世で村の一つか二つ救ったことがあるのかもしれない。
よしよし、と頭を撫でていると、
「……なあ、今、もっかい言って」
「何を?」
「九条さん、抱いて下さい、って」
「あ、あれは、そういう意味じゃ……きゃっ!」
押し倒してきた九条はもう、いつもの九条で。
「あの銀行用語、他の男に使うの禁止な」
「ん……!ま、待って、部屋の電気……」
「つけたままする」
首筋を這う唇と服の中に滑り込んだ手に、ささやかな抵抗と理性は吹き飛んだ。