この恋、上方修正銘柄です!
「ということで、今日は俺にちょっと考えがある」
金庫に向かった九条が、伝票の束を幾つも抱えて戻って来て、どん、と錦の机に置く。
「担当欄にこの人の判子が押してある伝票に、付箋を付けていって欲しい」
と、ホワイトボードに挙げたある人物の名に丸をつけた。
綴じられた伝票は一冊一冊が分厚い。
「え、これ、全部?」
「まだまだあるで。とりあえず、検査が終わった次の日から昨日までの一週間分。そっからは可能な限り遡る」
「それで、九条くんは何を探してるの?」
「ナイショや。高辻は何も知らん方がええ、今はまだ、な。とりあえず俺の探してるモンが見つかったら、オフィスプレイを何卒……」
付き合いきれないので、机から紙めくりクリームと付箋を出して伝票の束を開いた。
銀行は業務の特性上、金庫や鍵の管理が一般的な企業と比べて極めて厳格に行われている。
だからこんな風に休日出勤して伝票を自由に見られるのは九条のお陰だ。初めて甲斐のために何か出来るような気がした。
「九条くん、ありがとう」
「……俺の高辻が可愛すぎて無理」
10年間密かに想い続けてきた九条と付き合うことが出来ただけでも奇跡なのに、九条はすっかり溺愛モードで、特に昨日からはずっとこの調子だ。
この前、九条が買ってくれたピアスとネックレス。今朝、貰った時以来初めて着けてみたら、危うくベッドに逆戻りになるところだった。
ここに来てようやく、九条も自分を好きなんだと実感できるようになってきた。
あまりに幸せで。
幸せすぎて、足元をすくわれそうな……
「ん、どうした?」
幸せすぎて不安だなどと言ったら、拗らせ過ぎだとまた笑われそうだ。
「ううん、何でもない」
一瞬、ホテルで見かけたブロンド美女が脳裏をよぎったが、九条が何でもないと言っていたからそうなのだろう。
とにかく今出来ることをしようと決意し、作業に戻った。