この恋、上方修正銘柄です!

 数日後、次長の鹿ヶ谷が顧客の金を横領した容疑で逮捕された。
 土曜出勤したあの日、九条がホワイトボードに丸をつけた人物だった。
 ざわつく本店営業部に、人事部の真由子から直通電話がかかってきた。営業時間中にかけてくることなんて殆どないから、なんとなく嫌な予感がした。
「鹿ヶ谷次長の件、今回の件は氷山の一角で、もっと余罪があるみたい。それと……次長の供述では、九条さんにその件でゆすられて、うちの顧客情報を渡したって」
「そんな、噓……」
 
 ダメ押しのボディーブロー。

「九条さん、FXで失敗してお金に困ってたんだって。私も信じたくないけど、九条さんと連絡が取れないの。さっきアベル&カンパニーの東京支社に電話したんだけど、何も答えられないし取り次ぎも出来ないって言われて。錦なら何か知ってるかと思ったんだけど」
「私も何度か電話してるんだけど、ずっと繋がらなくて……」
「じゃあもし繋がったら、人事部に連絡するよう伝えて」 
 震える手で受話器を置く。皆に広まるのも時間の問題だろう。

 もしこの件が本当なら、高崎専務の娘との婚約はなくなる筈。良かった良かった……って、ちっともよくない!!
 どん、と両手で机を叩いたので、向かいの席の大原がビクッと肩を震わせた。

 この非常事態にひとりノリツッコミまでしてしまうとは、あまりにも九条の影響を受けすぎている。

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