この恋、上方修正銘柄です!
「……アナーバーで九条くんがお世話になったっていう、ルームメイトの?」
「そや!正真正銘その先輩とクロエの子!」
「……本当の、本当に?」
「DNA検査でも何でも煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「……高崎専務のお嬢さんと婚約したって、竹田さんたちが言ってた」
「ハァ?誰やねん、そんな根も葉もない噂立てたんは……。確かにミス日本のファイナリストに残った美人やったし見合いをしつこく勧められたけど、断腸の思いで断ったっちゅーねん」
「……いっそ本当に腹でも切れば良かったのに!」
「ちょ、冗談やん、一旦落ち着こ、な?」
「日本じゃ今大変なことになってるのよ!週刊誌の記事、あれどういうこと?それに次長をゆすって手に入れた顧客データは?全部ちゃんと分かるように説明して!」
「だーから、説明するって言うてんのに、そっちが逃げるからやろ」
「だって、私の顔見た時、九条くん、迷惑そうな顔した……」
思い出すと、また泣けてくる。
「違う!逢いたくて毎日死にそうやったから、夢かと思ってビックリしただけや!しかもちょっと見んうちに何かまた別嬪になってて……。俺が高辻のこと、どんだけ好きでどんだけ大事でどんだけ飢えてるか、ベッドであんなに教えたのに全然分かってへんし!」
「なっ……!」
焦ったが、ここはロサンゼルス。日本語が通じなくて良かった、と熱くなった頬を抑えた手を取られ、腕の中に閉じ込められた。周囲から冷やかしの口笛が聞こえる。
ロサンゼルスの街中で人目もはばからず抱きしめられるという展開。これがドラマなら主役二人は心を通わせ情熱的なキスを交わすのだろうが、まさかのミスキャスト。
「こうしたら女はみんな九条くんの思う通りになるなんて思わないで!」
ドスドスと胸を叩くと、イタタと声が上がる。それでも九条は、腕を緩めようとしない。
「いっぱい泣かせてごめん。こう見えて死ぬほど反省してます。……けど実は、ちょっと嬉しかったりして。高辻、俺のことめちゃくちゃ好きやん。あー、なんか幸せ」
「は、離して!このお調子者!」
「二度と離さん」
「九条くんなんて大っキライ!」
「俺は大好き」
「……そういうところがキライなの!」
と、あはは!と明るい笑い声が聞こえた。
見れば、観衆の中に子どもを抱いたクロエがいて。
「Japanese comedy、 "manzai"!あなたたち、目立ち過ぎ」
「え……日本語?」
驚く錦にクロエは華やかな笑顔でクスッと笑った。