この恋、上方修正銘柄です!
「名前はクロエ・ベネット。ツカサとは、彼がアナーバーに来てすぐの頃に知り合ったの」
「クロエの親父さんは投資会社を経営してて、それがもう笑える位の大富豪でな。アベルの筆頭株主でもあり、大学の奨学金を援助してくれたロータリー財団の理事でもある」
「日本語を話せるのは、父の仕事の都合で子どもの頃に日本で暮らした時期があることと、それから……」
と、意味ありげな視線を九条に送ると、
「恋人が日本人だったから」
「やっぱり……」
「いや、ちゃうっちゅーに!高辻、さっきのくだり思い出そ!クロエも頼むわ〜」
クロエは少女のようにくすくす笑って、
「ごめんなさい。ツカサが焦るのがとっても面白くて。こんな彼、見たことなかったから」
「そうなんですか?」
九条を見ると、赤い頬をごまかすようにコホンと咳をした。
「とにかく!俺の身の潔白を証明するために、ここで一旦整理するで。俺が世話になった先輩の恋人がクロエ。で、二人の子どもがリアム。ここまではOK?」
「今日はその先輩、クロエさんのパートナーは一緒じゃないんですね」
何気なく言った言葉だったが、二人の表情が曇ったのが分かった。
「結婚の約束をしていたけれど、出来なかった。3年前の冬。リアムのことも知らないまま、彼は地上での旅路を終えてしまったから」
「え……」
「その先輩は日本人でな。俺らより5つ上。就職先は、高辻もよう知ってる日本の都銀や」
3年前に死去。都市銀行に勤務。
ぞわっと鳥肌が立つ。
「もしかして……、甲斐理(かいおさむ)課長?」
震える声で尋ねると、クロエがゆっくりと頷いた。