この恋、上方修正銘柄です!
「抗うつ薬のオーバードーズ。オサムの両親は息子の死に疑問を持ち、調べようとした。けれど遺書は見つからず、スマホのパスワードも分からない。真実が知りたくて銀行に行ったら、役員達はろくに謝りもせず、データを売った犯人だと決めつけて賠償の話をしてきたって。二人とも、泣いてた」
クロエはリアムの頭をそっと撫でて、
「妊娠が分かったのは、ちょうどその頃。私、絶対に産もうと決めた。色々大変だったけど、なんとか無事にこの子が産まれ、ようやく少し落ちついて彼の遺品を整理していた時、偶然メモを見つけたの。私への短いメッセージと、見覚えのない数字。それがスマホのパスワードだった。彼がやっていたtwitter、そこには信じられないような過酷な労働や上司からのハラスメントが細かく記録されていて……暴言が録音された動画も残されていた」
「それが約半年前の話や。そのツイートがあれば労働災害は認められるやろう。出版社の上の方にも知り合いがいるから協力もしてもらえる。けどこのままやと顧客情報漏洩の犯人にされたままや。クロエから話を聞いた俺は、なんとかして甲斐さんの身の潔白を証明したいと思った。それには内部に潜入するのが一番手っ取り早い。で、俺にお鉢が回って来たワケや」
「自分がやると言い張ったくせに。ニシキの勤務先だったからなのよね」
九条はうっ、と言葉に詰まった後、
「まあ、そこは否定はせーへん。高辻の勤め先ってことは渉から聞いてたし。けど本店営業部にいると知ったんは潜入決めてからやったし、マジでビビった」
「でも九条くん、アベルからのセカンドメントで来たって……」
「アベルのCEOはクロエの叔父さんでな。ほら、パーティーで紹介したやろ。事情を話したら全面的に協力するって言ってくれて。……ちなみにあの時、まだしてないんかって俺が笑われてた、pop the questionっていうのは……」
「You finally popped the question!」
「……プロポーズをする、っていう意味。分かった?」
九条を見ようと振り返ろうとした錦の顔は、大きな手で挟まれて前を向かされた。
「……じゃあ、クロエさんがホテルにいたのも?」
「状況を知りたくて叔父について来たけど、期待していたような成果がなくて。私、ツカサを責めてしまったの」
「あの時はちょっと反省した、高辻口説いてる場合ちゃうなって。とにかく、ほらな。新シーズンで復縁してなかったやろ?」
「一晩中ずっと傍にいてくれて、優しく慰めてくれた」
「え……?」