この恋、上方修正銘柄です!

「それに、高辻がやったっていう可能性もゼロじゃなかったからな」
「私を疑ってたの!?」
「あくまで可能性の話や。よくあるやんか、悪い男に騙されて、真面目な女子社員が不正行為に手を染める話」
「確かに火サスにありそうだけど……」

「冗談さておき。ある時俺は、鹿ヶ谷次長にかかってくる電話の中に妙な相手がいることに気がついた。ほら、高辻も取ったことあるやろ。ズズキとかタナカとか、ありがちな苗字のヤツ」
「あ、何度かある」
「普通、客からの電話ならそれなりに長くなるやろ。けど、ハイハイ返事するだけですぐに切りよる。それでピンと来た。消費者金融の取り立ての電話やって。で、とある筋の知り合いに鹿ヶ谷の周りを調べさせたらもう出るわ出るわ、競馬やギャンブルでつくった借金が次から次へと」

「とある筋の知り合い……」

「高辻サンそこ引っ掛かるとこちゃうから。で、その多額の借金なんやけど、不思議な事に順番に完済されていっとる。いくら都銀の次長つってもありえへん金回りや。甲斐さんが亡くなった前後には、顧客情報を売ったとしか思えん額が返済されててな。コイツが甲斐さんに罪を着せた犯人で、今も間違いなく何かやってると踏んで、証拠を探すことにした。金庫から現金を盗むんは銀行では不可能やと分かったし、顧客情報の線もログ管理やセキュリティが厳しくなってて除外。他は郵便の別納金の着服とか、貸金庫で預かってる諸々の窃盗とか、業務委託してる先からのキックバックとか、あと高辻が言ってた振込での資金移動とか、色々と」

 焼肉を食べに行った帰りのタクシーでその話をした記憶がある。九条は途中で寝てしまったと思っていたけれど。


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