この恋、上方修正銘柄です!
「じゃあ俺から質問。さっきの返事は」
「何の?」
「何のって、プロポーズに決まってるやん」
ふてくされた顔でそう言った後、ふっと笑って。
「さっき、玄関で落としたやろ。これ拾ってたから追っかけるのが遅れた。……まだ持ってたんやな」
九条の手の中にあったのは、消しゴム賽子。
「捨てたって言うてたクセに、何なんジブン……可愛過ぎてキュン死しかけたわ。俺のこと、殺しにかかってるやろ。こんなもん握りしめて逢いに来られたら、プロポーズするしかないやん」
そして、真摯な声と一途な視線で。
「一生、大切にする。浮気も不倫もせえへん、っておんなじか。とにかく絶対、後悔させへんから。だから、Yesって言え。じゃなくて言ってください」
錦は仰々しく溜息をつく。
「……九条くん」
「……な、何や」
「前にも言ったけど、私、二択で後悔する性格なの」
「ちょっと待った。まさか断る流れなんコレ。Noで後悔するよりYesで後悔の方が良くない?……ってあかん、後悔させへん言うたとこやった。とにかく、一旦落ち着こ。それで、も一回よく考えてやな……っ!」
焦る九条の頬に手を添えて、形の良い唇に口付けた。
「大好き」
不意打ちのキスと言葉で、頬を赤くする九条に。
「音信不通になった仕返し。その選択肢はYesの一択しかないから、いくら私でも後悔のしようがない」
賽子を載せた大きな掌に、自分の手をそっと重ねる。
「The die is cast. 既に運命は決まったのだから進むしかない。……覚えてる?あの日、九条くんが私の手にサイコロを振ったの。高校を卒業して10年。回り道したと思ってたけど、そうじゃなかった。私の道の先に九条くんが繋がってくれていて、本当に嬉しい。不束者ですが、末永くよろしくお願いします」
互いの想いを確認するようなキスを交わしたあと。
「結婚したら、どこに住むことになるの?」
「とりあえず今はLA支社勤務やし、高辻の銀行で偉くなる宣言も聞いてるから、暫くは別居婚になるんかなあ。あ、そもそもの甲斐さんの件が解決したしもうええんか?」
「……離れるのは、もう嫌」
「……俺も。実は今、東京支社への異動願い出してるねん。それが通らんかったら日本の企業に転職するとか、まあ方法は幾らでも……。とはいえ俺がこうして仕事が出来てるんはアベルの看板のお陰やってのも分かってるから、出来れば辞めたくはないんやけど。あ、ちなみに今回取引した企業からめっちゃオファー来てたり。高辻んとこも含めて」
「え、そうなの?」
「若しくは高辻が独立開業して俺専属の税理士になるってのもアリ?」
結婚はきっとゴールじゃない。
仕事だけじゃなくて、親のことや家のこと、考えないといけないことが、これからも沢山出て来ると思う。
今はこんなに好きでも、心変わりすることもあるかもしれない。
それでも、そんな不安なんてどうでも良いと思えるほどには九条を愛している。