この恋、上方修正銘柄です!
変な方向への盛り上がりが一段落した後、課長と紫野は違う席に移動して行った。後輩コンビも別のテーブルで預金課の女子達と話が弾んでいるようだ。
川端が居るのは元々の席だから分かるが、どういうわけか九条も居座る気らしく、メニューを開いて店員に何か注文している。
両隣を大柄の男に挟まれ、かつ、二人の間には何故か微妙な緊張感があり、居心地が悪い。
手持ち無沙汰でグラスに手を伸ばすと、九条に止められた。
「ストップ。高辻さんはこっち」
回収されたビールの代わりに、渡されたのはオレンジジュース。
「酔い覚ましに効果があるんだって」
「ありがとうございます……」
わざわざ注文してくれたらしい。さっきの宣誓を見てかなり酔っていると思われたのかもしれない。恥ずかしい。
特に飲みたいわけではなかったが、口にしてみると求めていた味だった。
こういうことをサラッと出来る男がモテない筈がない。事実、遠巻きにこちらを監視している女子たちの視線が痛い。
いたたまれない思いでカウンター横のモニターに目をやると、サッカーの中継が流れていた。
「そういえば、ワールドカップの壮行試合、今日なんですね」
「わ、始まってる!見ない見ない。家に帰って録画見るまでスマホも封印しよ。SNSやニュースで結果分かったら最悪だし」
サッカー好きらしい川端はハッとした表情で、
「そういえば高辻さん、日本代表の壬生渉(みぶわたる)と高校が同じだったよね!」
「そうですけど」
「もしかして、仲良かったとか」
「私からすれば親しかった部類に入ります」
あまり友達がいなかったので、という部分は省略した。
「ですが、それは共通の友人がいたからこそで。その友人がいなくなってからは疎遠です」
錦の言い方に、川端は表情を曇らせた。
「え、その友達、どうしたの?……まさか、お亡くなりになった、とか?」
根掘り葉掘り聞かれるのも面倒で、
「まあそのようなものです」
直後、隣の九条が、ゴホッゴホッと咳き込んだ。
「……大丈夫ですか?」
とハンカチを差し出す錦に、
「うん、平気……。ああ、いいよ大丈夫、ありがとう」
九条アーヴィングと九条吏。
全然違う。違うけど……
やっぱり、なんか怪しい。