この恋、上方修正銘柄です!
改札出口の列に並んでいると、
「あれ、高辻さん?」
振り返ると少し後ろにいる九条が見えた。九条くん、と思わず出かけた言葉を飲み込んで。
「おはようございます。九条さんもこの電車だったんですか」
改札を抜け、肩を並べて歩く。
「普段より10分早く出た。高辻さんはいつもこの時間?」
「はい、多少は混雑がましなので」
「じゃあ俺も、明日からこの電車にしようかな」
一瞬、え、と思ったが、自分が乗っているからではなく、混雑がマシだという部分を受けての言葉だったと気付く。
「今日は眼鏡なんだ。目の調子でも悪いの?」
「使い捨てのコンタクトが切れたので眼科に行ったら、ドライアイ気味だと言われて。しばらく眼鏡にしようかと」
答えながら首をひねる。九条に視力が悪い話をしたことなんてあっただろうか。同僚から聞いたという可能性もなくはないけれど。
「そうそう、松原部長から話があるみたい」
真っ先に頭に浮かんだのは人事異動。
本店営業部に配属されて4年目。そろそろ異動があってもおかしくないものの、通常辞令は1日付で内示はおよそ10日前。何かミスでもしたのだろうかと良くない方向での考えをあれやこれやと巡らせつつ朝の業務をこなしていると、部長室に呼び出された。
恐る恐る部屋に入ると、松原部長の横には何故か九条が立っていて。
「私が、都市創生タスクフォースチームに、ですか?」
「元々、業務の補助員として融資課から1名出すことにはなっていたんだが、九条君が是非高辻君をと言うんでね。税理士資格も持っているし、適任だと私も思う。銀行の経営的な部分に関わることも多くなるから色々大変なことは多いが、勉強しておいて損は無いぞ。何なら返事は持ち帰ってからでも……」
花形のプロジェクトに加わる事が出来るなんて。
「やります、やらせてください!」
前のめりに返事をしてしまい、九条が声を出さずに笑っていることに気付く。
「では部長、僕のアシスタントは高辻さんに決定ということで。今日から君の直属の上司は僕だ。どうぞよろしく」
差し出された手は、指が長くて綺麗だった。