この恋、上方修正銘柄です!
「本日から都市創生タスクフォースの室長として来てくれることになった、クジョー・アーヴィング君だ」

 営業推進部トリオが全員20代だったことに色めき立っていた女性行員たちのテンションは、その外資系コンサルの登場で、一気に最高潮へ達した。
 すらりとした長身でビジネススーツを着こなす彼が、エキゾチック&ミステリアス系の超美形だったからだ。

「クジョー君はミシガン大学ロスビジネススクールでMBAを取得後、戦略的コンサルティングファーム、アベル・アンド・カンパニーに就職。シカゴで創立され、東京支社を含め世界40カ国にグローバルネットワークを擁する会社だ。最年少で課長に昇進し、現在ロサンゼルス支社に勤務。従来の会社に籍を置いたまま、3ヶ月間うちでプロジェクトの指揮を取る形、いわゆるセカンドメントで来てもらった」

 少しクセのある青みがかった黒髪は銀行業界的には長髪の部類で、左サイドは耳にかけられている。髪と同じ色の瞳にすっきりとした鼻筋の精悍な顔立ちで、まるで日本人のように見える。
 しかしその容貌に錦が釘付けになった理由は、他の女子達とは少し違っていた。

「ただいまご紹介に預かりました、ABEL & COMPANYからのセカンドメントで着任したクジョウと申します」
 良く通る、少し低めの声。見た目を裏切らない流暢な日本語だ。
「向こうではCudjoと名乗っていましたが、日本の戸籍では漢数字の九に条件の条で九条です」

 え、と思わず声に出しそうになったのを、かろうじて堪えた。

「年は来年で30。金融機関を対象としたM&Aおよび資金調達に関する部門が専門です。3ヶ月という短い期間ですが、宜しくお願いします」
 深々と一礼した九条に、特に女性行員から大きな拍手が起こった。
 
「あのアベルですよ?しかもイケメンでハーフで課長でバイリンガルとか、どんだけ属性盛ってくるんですか!」
「とりあえず、左右の手には指輪無し!」
「明日から会社来る理由、爆誕したわ」
 はしゃぐ一同を男性行員達が面白くなさげに眺める中、いつもの朝礼が始まった。

 松原部長の隣に立つ九条をこっそり観察する。
 似ている。見れば見るほど似ている。
 さっきの声の質感も。
 来年で30ということは、現在29。早生まれの錦より一つ上の学年か、或いは同級生。
 一瞬、九条と目が合った。が、そのまま表情筋一つ動かすことなく視線は逸らされた。

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