この恋、上方修正銘柄です!
3-3
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翌日の金曜は18時過ぎに退社した。近隣店舗で働く同期との飲み会があったからだ。1ヶ月間研修施設で過ごした仲間は、戦友でもあり同志だ。
「随分と寂しくなったもんだねえ」
入行以来の親友である新町真由子(しんまちまゆこ)が、二次会のカラオケで盛り上がるメンバーを見渡して、しみじみと呟いた。
当時、都内だけで200人以上いた同期は、公務員への転職やヘッドハンティング等で、最初の数年で4割近く減ってしまった。その後の離職ペースは鈍化しているものの、ジリジリと減り続けている。
バラードを熱唱しているのは、真由子の元カレでもある今や妻子持ちの男だ。熱唱する横顔をじとっとした目で眺めながら、
「男は良いねえ。結婚しても生活は大して変わんなくて。共働きで幾ら役割分担しても、結局家事の負担は妻に来るんだもん。目の前にゴミが落ちてても気付かないし、見えてないの、男って。ホント、やってらんないわ」
グラスワインを飲み干した真由子の左手薬指には、まだ新しいマリッジリングが光る。
「新婚早々そんな感じ?これからどうするの」
「さてどうしよう。二人で生活する分にはまだ良いとして、将来子どもを作ることにはホント躊躇する。役に立たない旦那じゃなくて、家事万能の奥さんが欲しい」
「育休取れるんだよね。最長2年って聞いたけど」
「このまま人事部にいられるなら復帰後の時短勤務も可能だけど、支店だと厳しそう。そこそこでやめてもらって後は安いパートで再雇用したいってのが上のオッサン達の本音だから。まあそれを甘んじて受け入れてる女子も女子だし、ある意味win-winなのか?」
深いため息をついた後、ぱっと明るい顔をして、
「それでどうよ、九条アーヴィング!同じチームに抜擢されたんでしょ?」
何の脈略もなく急に話が飛ぶのは真由子の癖だ。本人の中では話がきちんと繋がっているらしいが、今夜のように酒が入ると余計酷くなる。
「えっと、何がびっくりしたかって、残業代が残った時間だけきっちりつくこと」
「ウソ、すごい!って、人事部がそれ言うなって?」
「仕事で残ってるんだし、当然の権利だって」
未だかつてそんな風に断言し、且つ実行出来る上司に出会ったことがなかったので、ちょっと感動してしまった。
「けどそれって部長や次長から何か言われない?」
「外部の人だから、さすがのあの人達も言いにくいみたい。それに一目も二目も置かれているみたいだし」
「わあ、なんかカッコいいね。それでそれで?」
「付き合い残業はゼロで、自分の仕事が終われば定時で帰れる」
「残業の話はもういいわ。他、早よ」
「ええっと、仕事は凄く出来る」
「そういえば聞いた!今日の経営幹部会議、アーヴィング無双だったんだって?」
今日の午後ーーー
翌日の金曜は18時過ぎに退社した。近隣店舗で働く同期との飲み会があったからだ。1ヶ月間研修施設で過ごした仲間は、戦友でもあり同志だ。
「随分と寂しくなったもんだねえ」
入行以来の親友である新町真由子(しんまちまゆこ)が、二次会のカラオケで盛り上がるメンバーを見渡して、しみじみと呟いた。
当時、都内だけで200人以上いた同期は、公務員への転職やヘッドハンティング等で、最初の数年で4割近く減ってしまった。その後の離職ペースは鈍化しているものの、ジリジリと減り続けている。
バラードを熱唱しているのは、真由子の元カレでもある今や妻子持ちの男だ。熱唱する横顔をじとっとした目で眺めながら、
「男は良いねえ。結婚しても生活は大して変わんなくて。共働きで幾ら役割分担しても、結局家事の負担は妻に来るんだもん。目の前にゴミが落ちてても気付かないし、見えてないの、男って。ホント、やってらんないわ」
グラスワインを飲み干した真由子の左手薬指には、まだ新しいマリッジリングが光る。
「新婚早々そんな感じ?これからどうするの」
「さてどうしよう。二人で生活する分にはまだ良いとして、将来子どもを作ることにはホント躊躇する。役に立たない旦那じゃなくて、家事万能の奥さんが欲しい」
「育休取れるんだよね。最長2年って聞いたけど」
「このまま人事部にいられるなら復帰後の時短勤務も可能だけど、支店だと厳しそう。そこそこでやめてもらって後は安いパートで再雇用したいってのが上のオッサン達の本音だから。まあそれを甘んじて受け入れてる女子も女子だし、ある意味win-winなのか?」
深いため息をついた後、ぱっと明るい顔をして、
「それでどうよ、九条アーヴィング!同じチームに抜擢されたんでしょ?」
何の脈略もなく急に話が飛ぶのは真由子の癖だ。本人の中では話がきちんと繋がっているらしいが、今夜のように酒が入ると余計酷くなる。
「えっと、何がびっくりしたかって、残業代が残った時間だけきっちりつくこと」
「ウソ、すごい!って、人事部がそれ言うなって?」
「仕事で残ってるんだし、当然の権利だって」
未だかつてそんな風に断言し、且つ実行出来る上司に出会ったことがなかったので、ちょっと感動してしまった。
「けどそれって部長や次長から何か言われない?」
「外部の人だから、さすがのあの人達も言いにくいみたい。それに一目も二目も置かれているみたいだし」
「わあ、なんかカッコいいね。それでそれで?」
「付き合い残業はゼロで、自分の仕事が終われば定時で帰れる」
「残業の話はもういいわ。他、早よ」
「ええっと、仕事は凄く出来る」
「そういえば聞いた!今日の経営幹部会議、アーヴィング無双だったんだって?」
今日の午後ーーー