この恋、上方修正銘柄です!
最上階の役員会議室には頭取や取締役が一堂に介していた。
「ロンドンのキングス・クロス再開発のように、歴史的建築と広大な緑のパブリックスペースを核とした、持続可能で世界基準の低層・複合型都市再生を目指すプロジェクトです」
飛んでくる質問一つ一つに圧があり、自分なら空気に飲まれて頭が真っ白になっていたかもしれない。
財務から法務まで、東山が返答に困るような意地の悪い質問にも九条は余裕の表情を崩さない。具体的な数字や事例を用いながら的確に返していく。
最大の難所はデベロッパーの1社である保田不動産への追加融資の是非だった。
「しかし、タワマン建設に比べると収益は大幅に減少するだろう」
「ですがこのまま敷地を死なせておくくらいなら、官民連携のローリスクで長期的に手堅く稼ぐモデルに切り替えるのが賢明です。Park-PFIを活用し、商業施設の収益を公有地の維持費に還元すれば自治体の評価も得られます」
役員は腕を組んだり、隣同士で話したりしている。
「今回のタワマン頓挫は、大手でなければ一発で破綻していたほどの厳しい局面です。しかし先方は、自社グループの事業を切り売りしてまで資金繰りを繋ぎました。引当金の積み増しを嫌がって貸付金を回収に走るのではなく、再生の可能性が見えた今こそ、当行が支援に入るべきではないでしょうか」ーーー
「終わった後で拍手が起きたのは前代未聞だったんだって」
「えー、すごいね!それでそれで?」
「優しくて紳士的」
「うんうん」
「店の女の子達に大人気」
「うんうんうん」
「……以上だけど?」
「えー!もっとあるでしょ。こう、恋愛的なものはないワケ?アーヴィング、独身なのよね?」
こぶしを効かせながら名前を言ったので笑ってしまう。
「そういう対象で見てないから」
「アンタ、そんなこと言ってるから何年も彼氏が出来ないんだよ!」
「大きなお世話です。それに、なんだか完璧過ぎる気がして」
何処となく胡散臭さを感じるのは気のせいだろうか。