この恋、上方修正銘柄です!

『来週か再来週あたりはどう?』
 返事を打つと、すぐにOKのスタンプが返って来て、
『仕事、相変わらず忙しそだね』
 少し迷ったがさすがにもう時効だろうと、九条という姓の男と今一緒に仕事をしていることを伝える。
『しかもそれが九条くんそっくりで』
『兄貴とか?もしかして、本人かもよw』
『何してるか知ってる?』
『ロサンゼルスにある、大っきな会社に勤めてたはず。前に壬生から聞いた話だから今どうかは知らないけど』

 机の中から九条にもらった名刺を取り出す。
「LA支社勤務……」
 偶然の一致にしては、あまりにもファクターが多すぎる気がする。


「高辻、添付資料から前年度のキャッシュフロー計算書作ってくれる?あと、資金繰表も」
「資金繰表は一期分で良いですか」
「うん。あと、このタワマンの収益予測を出してみて。今回は分譲と賃貸が混在する計画だから、全体の売却益と賃貸部分の事業性の両方がわかる形にして欲しい。入居率は近隣の類似タワマンを参考に」
「分かりました」
 書類を作成しながら、醒ヶ井渉外課長と打ち合わせをする九条の姿を盗み見る。

 完璧な九条アーヴィングと、チャラ男の九条吏。
 どう考えても別人だ。それでもどこか引っ掛かる部分があるのも確かで。

 昨日も九条と船岡と、たまたま3人で行くことになった社員食堂。船岡がトレイに載せた油揚げ入りの蕎麦を見た九条が、
「俺もたぬきにすれば良かったな」
「いえ、きつね蕎麦スけど」
「……いや、ああ、そうか」
 きつねとたぬき。
 確か関西と関東では、油揚げがのった蕎麦やうどんの呼び方が違った筈だ。

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