この恋、上方修正銘柄です!
日々、疑惑は深まっていく、そんなある日。
役席会議から戻って来た九条に、おつかれさまです、と声をかける。
「高辻もおつかれ。タームシート、もう出来たんだ」
決裁トレイに入れたシンジケートローンの契約書に気付いた九条が、ネクタイの首元を緩めながら手に取った。
「調印までに先方に準備しておいてもらう書類についてまとめたものも付けておきました。外部格付のエビデンスは、R&Iのもので良いですか?」
「もう完璧。一を聞いて十を知る。A word to the wise is enough. イイね!」
昔聞いたことがある、この感じ。
九条はデスクに置かれた小型の段ボールに目を留める。
「これは?」
「あ、それ、さっき一旦戻って来た志水さんが置いて行きました。みなさんでどうぞ、って」
意外にも甘いもの好きな九条がぱっと顔を輝かせたので、
「残念ながら食べ物ではなさそうです。メーカーから貰った非売品だそうで」
蓋を開け一緒に中を覗くと、戦隊モノやライダーのフィギュアが入っていた。
「うーん、最近のは知らないからなあ」
「私は少し分かります。友人にライダーファンがいて」
「ああ。ライダー出身でブレイクする若手俳優、多いもんね」
ん?と思ったのは、その友人の性別が女子だと分かっているような返事だったからだ。
「船岡、好きそうだなこういうの」
九条は箱から取り出してあれこれ眺めている。
「……ライダー展で綾乃が買ったフィギュア、フリマアプリですごい値段がついてた」
「そうそうあれな!俺も買っときゃ良かった……とか言ってみたりして」
「え?……嘘……」
絶句する錦に、九条がニカッと笑う。よく知ってる顔だった。
「気づくの遅くない?タイムラグえぐいて」
まさか、とも思うし、やっぱり、とも思う。
色々言いたいことはあるし、聞きたいこともあるけれど。
怒りがふつふつと湧き上がり、口から出た言葉は。
「……バカ過ぎて意味分かんない!」
そして周囲に気づかれないように、九条の脇腹に肘打ちを喰らわせた。