この恋、上方修正銘柄です!
Lesson4 相変わらずの彼と茶筒
4-1

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会社から一駅離れた、古い雑居ビルの地下1階。看板は真鍮のプレートが出ているだけの隠れ家的なバーだ。
一枚板の重厚なカウンターの端、ふたり並んで座る。
「いやーまいったまいった。5月1日に初出勤して今日が15。ついにバレたか。GWもあったしまあこんなもんやろ」
グラスの氷をカランと鳴らしながら九条が言った。
「眼鏡、カラオケ、ピザ屋にペン回し。地味に色々ヒント出してたん分かった?佐藤錦はちょっとやりすぎたかなー思ったけど。お気に入りは、きつねとたぬき」
ムスッと黙る錦に少しだけ焦った様子で、
「別に隠すつもりはなかったんやで。九条吏くんですかって聞かれたら、ハイそうですって言うつもりやったのに、全然聞かれへんねんもん。生き別れになった双子とか従兄弟とか、逆に何なん?」
「だ、だって……イメージが全然違うから。九条くんといえばコテコテの関西弁だったし。標準語も普通に話せるんじゃない」
「コテコテて何やねん。で、カマかけてみた、と。あれ、なかなか良かったで。どう、高辻ん家は皆変わりなく?」
「お陰さまで。って、そんな話より、名前!どうやって銀行の身辺調査通したのよ」
九条はこめかみをポリとかいて、
「あ、これ、本名」
「え?」
「オカンが日系アメリカ人でな。アーヴィングは元はオカン側の姓っていうか。いわゆる二重国籍ってやつ?」
「……初耳」
「そりゃそうや、誰にも言ってへんもん。子どもの頃、兄貴がそれでいじめられてたん見て、あコレ言わん方がええやつやって思って。オカンはラテン系で目も髪も黒かったし、それこそコッテコテの関西弁で、しかも英語はからっきし。おかげで兄貴も俺もハーフ感ゼロや」
九条の母親は小さい頃に他界したと、高校時代に本人から聞いた事がある。
「ちなみに日本名が九条吏で、アメリカ版やとTsukasa Irving Cudjo になる。OK?」