この恋、上方修正銘柄です!

「あー、俺も子ども欲しい。なな、俺の子、産んでみる気ない?」
「……代理母出産?」
「一旦取り出した精子と卵子を受精させて、子宮に戻す。約8ヶ月後、俺は晴れて未婚の父親に。めでたしめでたし。って違うっちゅーに!」

「長い……」
「そっちこそ重ねてくるなあ。なんかはぐらかされた気するけど、オモロかったし今日はこの辺にしといたる」
とスマホをカウンターに置いて、
「で、なんとかMBAホルダーになって、戦略系コンサルティングファーム、アベル&カンパニーに就職。派遣制度を活用して、現在に至る。以上」

「波瀾万丈の10年だったわけね」
「はーもう何が疲れたって、高辻の前でアーヴィングキャラ維持すんのが疲れた。やっと言えてホッとしたわ」
「そっちが面白がって黙ってただけじゃない」
「いや、ホンマにそうじゃないねんけど……」
「じゃあなに?」

 問いつめられ、視線を右上に泳がせていた九条は、ハッと思いついたように、
「ああそうや!同級生とはいえ職場では上司やねんから、社内では敬語使えよ」
「はいはい、分かってます」
「ハイは一回で。あと、変な噂立てられても面倒やから、俺らが同級生ってことは……」
 ふいに体の距離を詰め、耳元に顔を寄せて、

「二人だけの秘密、な」 

 掠れた低い声が、熱を帯びた吐息と共に左耳をかすめ、慌ててガタッと身を引いた。
「な!……何!?」
「あ、もしかして耳、弱い?」

 確信犯とも思える意地悪い笑顔は、職場で見る品行方正な九条とも、高校時代のお調子者な九条とも違っていて。

「顔、赤いけど」
「お酒のせいです!」
と、グラスのハイボールを飲み干した。

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