この恋、上方修正銘柄です!
4-2
4-2
錦に正体を明かしてからも職場では、安定の九条アーヴィング劇場が繰り広げられている。
書類の確認をしようと席を立ったまま戻って来ない九条を探していたが、直ぐに見つけた。預金課後方担当の竹田と話している。
今までなら、同僚と打ち解けようとしているのだろうと温かい気持ちで見ていた光景が、あの九条だと分かった途端、ただ女の子と話したいだけに違いないと思えてくるから不思議だ。
九条は伝票や諸届けが沢山積まれた竹田のデスクに視線をやりながら、
「今日は一段と忙しそうだけど、大丈夫?」
「さっき鹿ヶ谷次長が届出印の変更と普通預金の解約を回して来て、思わず殺意を覚えました。ごとうびの忙しい時に限って言って来るんだから」
「ごとうび、って?」
「五十日と書きます。5日、10日、15日、月末など、5の倍数の日のことです。多くの企業が決済や給与支払に設定しているので業務が集中するんです」
「あ、今日がそうか。ごめんね、こんな日に」
「九条さんならいつでも大歓迎ですよ。何かあったら遠慮なく言って下さい。あ、起票の仕方でしたよね」
実際のところ、伝票の書き方くらい錦にでも分かる。そこをわざわざ聞いているのはそういうことなんだろう。確かに九条好みのゆるふわ系女子ではある。
電話が鳴り、ちょっと待って下さいと断りを入れた後、竹田が素早く電話を取る。保留を押して受話器を置くと、次長席を振り返って、
「次長、ヤスダさんからお電話です」
取り次いでいる間にもまた次の電話が鳴り、誰かが電話を取る。
「銀行って一日中、電話が鳴りっぱなしなんだね」
「電話を取るだけの人が一人欲しいくらいですよ。あ、それで、起票の仕方ですが、」
うん、と顔を近づけた九条に、竹田は頬を上気させながら、
「あ、預入れの場合はこのピンクの伝票に名前と金額を、引き出しや解約はブルーの方に名前を書いて印鑑を押してもらいます。解約の場合は金額は空けておいて下さい。利息がついて残高が変わるので、後で必ずお客さん自身に記入してもらいます。代筆は絶対に駄目です」
「ありがとう。事務的なことが分からないから助かるよ」
爽やかな笑顔に竹田がぽーっと見とれている。
九条吏。色んな意味で、昔よりもブラッシュアップしている。
錦に正体を明かしてからも職場では、安定の九条アーヴィング劇場が繰り広げられている。
書類の確認をしようと席を立ったまま戻って来ない九条を探していたが、直ぐに見つけた。預金課後方担当の竹田と話している。
今までなら、同僚と打ち解けようとしているのだろうと温かい気持ちで見ていた光景が、あの九条だと分かった途端、ただ女の子と話したいだけに違いないと思えてくるから不思議だ。
九条は伝票や諸届けが沢山積まれた竹田のデスクに視線をやりながら、
「今日は一段と忙しそうだけど、大丈夫?」
「さっき鹿ヶ谷次長が届出印の変更と普通預金の解約を回して来て、思わず殺意を覚えました。ごとうびの忙しい時に限って言って来るんだから」
「ごとうび、って?」
「五十日と書きます。5日、10日、15日、月末など、5の倍数の日のことです。多くの企業が決済や給与支払に設定しているので業務が集中するんです」
「あ、今日がそうか。ごめんね、こんな日に」
「九条さんならいつでも大歓迎ですよ。何かあったら遠慮なく言って下さい。あ、起票の仕方でしたよね」
実際のところ、伝票の書き方くらい錦にでも分かる。そこをわざわざ聞いているのはそういうことなんだろう。確かに九条好みのゆるふわ系女子ではある。
電話が鳴り、ちょっと待って下さいと断りを入れた後、竹田が素早く電話を取る。保留を押して受話器を置くと、次長席を振り返って、
「次長、ヤスダさんからお電話です」
取り次いでいる間にもまた次の電話が鳴り、誰かが電話を取る。
「銀行って一日中、電話が鳴りっぱなしなんだね」
「電話を取るだけの人が一人欲しいくらいですよ。あ、それで、起票の仕方ですが、」
うん、と顔を近づけた九条に、竹田は頬を上気させながら、
「あ、預入れの場合はこのピンクの伝票に名前と金額を、引き出しや解約はブルーの方に名前を書いて印鑑を押してもらいます。解約の場合は金額は空けておいて下さい。利息がついて残高が変わるので、後で必ずお客さん自身に記入してもらいます。代筆は絶対に駄目です」
「ありがとう。事務的なことが分からないから助かるよ」
爽やかな笑顔に竹田がぽーっと見とれている。
九条吏。色んな意味で、昔よりもブラッシュアップしている。