この恋、上方修正銘柄です!

 朝から降り出した冷たい雨が、校庭の銀杏並木を濡らす。グラウンド右横の体育館からは、ホイッスルの音が聞こえる。

「高校最後の学年で錦と一緒のクラスになれるなんてラッキー!」
と、綾乃がイシシと笑った。
「……何となく下心を感じるんだけど」
「高辻~、英コミュの課題見せてー」
「九条君は別のクラスなんだから気軽に入って来ないで」
「ええやん、ケチ」

 突然、右隣の男子がバンと机に勢いよく手を突いて立ち上がった。

「オレは今、全てを理解した……」
「なんや、コワイ顔して。男前が台無しやで」
「オマエが春休みの補習を免れたのは、こういうことだったのかよ……この裏切り者!」
「わ、一旦落ち着こ!ほら深呼吸!」

 壬生渉、サッカー部所属。スポーツ特待生で中等部に入学、以来ずっとレギュラー。
 綾乃の情報によると、小学生時代は地元のクラブチームで代表の常連だったらしい。
 サッカーに全振りしているのは誰の目から見ても明らかで、今朝も1限目から机に突っ伏し爆睡していた。これでは赤点を取るのも無理はない。

「ええなー、3人とも同クラで。斉藤め、俺だけハミゴにしやがって」
「いやココ、国立文系クラスだから。てか壬生は何で?スポ推じゃないの?」
「評定がガチでやばすぎて、勉強するクラスに放り込まれた」
「国立理系は隣か。残念やったな、王子サマと同じクラスになれんと」
 絶句する錦の隣、壬生がぽかんとした顔で、
「は?オオジって名前のヤツ、俺らの学年でいたっけ」
「あーもう、カワイすぎ!俺、お前のそういうとこ、ダイスキ!」
「わ、何抱きついてんだ、キモイんだよ!」

「そういえば、九条の彼女は?一緒のクラスになれたの?」
「ええっと、彼女って、誰のこと?」
 へらっと笑う九条に、錦は眉間を寄せ、綾乃は溜息をついた。
「ウソだろ、また別れたのかよ。人間的にどっか欠けてる部分があるんじゃね?オレ、オマエの将来に不安しかねえわ」
「そこまで俺のこと……アイシテル、渉!」
「だーっ!だからやめろ!」

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