この恋、上方修正銘柄です!
九条の腕をどうにか振り払った壬生が、げんなりしながら自分の席に着く。
「そういや、渉は?作らへんの、カノジョ」
「オ、オレのことは良いんだよ」
「なんや、顔、真っ赤やで」
「ウルセ」
頬杖をついて、ぷいと視線を逸らした壬生は、嘘がつけない性格らしい。
「すぐ顔に出んねんから。ほんまカワイイ奴やな。……アカン、また抱きしめたなってきた」
「ち、近づくんじゃねえ、ヘンタイ!」
ガタガタと椅子に座ったまま後退する壬生に九条が笑って、
「ええから、何でも俺に相談してみ?悪いようにはせーへんから」
「自分から告ったこともない奴に、オレの気持ちなんて分かんねーよ」
「そこはまあ、モテる男のサガっていうか?いうても、女心に関しては渉よりだいぶ詳しいはず。恋愛強者が聞いたるから。ほら、ほら」
「……そいつ、最近彼氏出来たんだ」
「あー、けど、別れることだってあるし、チャンスが全くないワケじゃ……」
「アイツの不幸を願うようなこと、したくねえ」
「渉……」
九条は感激したように目を瞬かせ、両腕を広げると、
「泣きたい時は、俺の胸に飛び込んで来い!」
そう言って、自ら壬生に抱き付いた。
「わっ、離せっ!ちょ、なにケツ触ってんだよ!」
そんな二人の様子を眺めていた綾乃がぽつりと呟いた。
「恋ってさ、難しいよね」
「なんや、小川にも好きな奴おんの?」
「アンタじゃないことだけは確かよ」
嘘つき、と心の中で思う。
「そや、さっき小川と話してたんやけど、放課後4人でカラオケ行かへん?渉、今日雨やし練習休みやろ」
「良いけど、とりあえずUNOやろうぜ」
と、壬生は机の中から取り出して、配り始める。
「私は行かない」
「なんでや。今日は予備校の日ちゃうやろ」
「だって流行りの曲、知らないし」
腕を組んだ九条は、大げさに首を振って、
「かわいそうに。義務教育の弊害やな」
「九条君はゆとり教育の申し子だもんね」
「あはは!オチがついたとこで、ほな行こか」
「行ってらっしゃい、楽しんで来て」
「おう、任せろ、声枯れるまで歌ったる。じゃなくてやな。まだ4月やで。今から受験勉強ばっかしてたら煮詰まってしまうやん」
「それ誤用。煮詰まるとは十分に議論をされて結論に近づくというポジティブな意味。行き詰まるという意味ではありません」
「マジか。テストに出るかな」
壬生が、綾乃に小声で尋ねる。
「高辻って、こんな奴だっけ」
「みたいだね」