この恋、上方修正銘柄です!

「……意外。富小路さんって、いかにも九条くんが好きそうな感じなのに」
 派手とまではいかないけど、メイク上手で華がある。
「さすが、何でもお見通しやな。って、なんかデジャヴ。そういえばあったな、高辻にストーキングされて告白現場見られたこと」
「……記憶の改ざんも甚だしいし」
「あははっ!安定のキレある返し!まあ、昔の俺が好きそうなタイプではあるかもな」



「今は違うの?」
「うん、違う。全っ然違う」
 長い海外生活で、日本人より外国人女性の魅力にハマった、とか?充分あり得る話だ。
「一見とっつきにくい感じに見えるけど実は素直で、笑うとめっちゃ可愛いコ」
「そうなんだ」
 アメリカ人の女の子に声をかけるのは、さすがの九条でも戸惑うということか。
「それと、背が高い」
「ふうん」
 向こうの女の人は背が高そうだし。
「あと、ボケをちゃんと拾ってツッコんでくれる」
「なるほど」
 海外の人に大阪人のお笑いが通じるのかは疑問だけど。
「待って。まさか1ミリも伝わってない?」
「何が?」
「ウソやろ……」

 愕然とする九条の手にあるスマホのディスプレイが着信画面に変わる 
「うわ、葛西常務からや。MBOの件やな。どうしよ、まだ何も見れてへんのに……出んとこかな」
 手を伸ばして、通話許可ボタンをタッチ。
「うわ、何ちゅうことを!……あ、はい、九条です。いえ、少し電波が悪いみたいで……申し訳ありません」
 標準語モードに切り替えた九条の恨めしげな視線に、知らん顔をする。
「MBOにあたってのSPCの件ですよね」
 それでも平然とした口調で話を始める九条の隣、鞄からタブレットを取り出し、新株主となる企業の概況表を開いて渡した。

「え、もう出来てたん?俺、頼んでないのに」
 驚いた顔をして小声でそう言うと、画面をスライドしてデータを確認しながら、
「流動比率の低下要因は有利子負債圧縮のため、借入金の一部繰上返済を実施したことによるものですし……はい、そうですね」
と、右手に持っていたスマホを顎に挟むと、アイスコーヒーを飲んでいる錦の頭をグシャグシャと撫でた。
 もう!と睨むと、ニッと笑った後、また会話に戻る。
「流動比率は150%、固定長期適合率は60%前後で推移していて適性範囲内。よって安全性についての懸念はないかと」

 仕事モードのスイッチが入った九条は、癪だけど格好良くて。ストローをくわえながら横顔をこっそり眺めた。 
 
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