この恋、上方修正銘柄です!

 交差点で手を振る佐藤がコンビニの角を曲がって見えなくなった途端、後ろの電柱の陰から九条と綾乃が姿を現した。
「なんだかすっごくいい感じ~!」
「……絶対、いると思った」
 溜息混じりにそう言った錦に、綾乃は少し驚いた様子で、
「じゃあ、ウチらに聞かれてるって分かってて、話してたの?」
「別に、二人になら知られても良いって思っただけ。……ありがと、心配して来てくれて」
「もうアンタってば、実はすっごくカワイイ奴~!」
「言っとくけど、期末は助けないから」
「げっ、前言撤回。やっぱ憎たらしい奴」

 ふと、絡んで来ない九条が気になった。
 九条は少し離れた場所からいつになく神妙な面持ちでこちらを見ていたが、錦の視線に気付くとヘラっと笑って、
「あー腹減った。何か食って帰ろうや」

 少しだけ先を歩く九条の飄々とした後ろ姿を見ながら、綾乃が呟いた。
「私も頑張ってみようかな、アイツのこと」
「私、このまま帰るから」
「べ、別に、今すぐどうこうとかじゃなくて……!」
「じゃあね、また明日」
 応援の気持ちを込めて、綾乃の背中をとん、と押した。


 夜、綾乃から電話が掛かって来た。
 あの後、九条に告白したこと。さっき電話が掛かって来て、OKの返事をもらったことを泣きながら報告してくれた。

 いつものようにすぐ別れたりしないように。明日にでも九条に釘を刺そうかと思ったけれど、やめておくことにした。
 九条に彼女が出来ることは今に始まったわけではないし、二人が付き合ったからといって錦の立場が今までと変わるわけでもない。
 なのに、なぜか九条が少し遠くなった気がした。
 そしてそのことを淋しいと思っている自分にも、心のどこかでは気付いていた。

< 62 / 162 >

この作品をシェア

pagetop