この恋、上方修正銘柄です!
一足制なので、いわゆる昇降口と呼ばれるものがない。スタスタと校舎を出て行く錦に追いついて。
「中学の頃から常に上位勢やもんな。けどまだ2年になったばっかやん。あんま根詰めすぎると息切れしてしまうで」
教科書と塾のテキストでずっしり重いスクールバッグを肩にかける錦に対して、隣の九条は手ぶら。明らかに予習復習を放棄している。
「うわ、なんか視線が痛いんやけど」
「進路相談、私の次が九条くんだった気がするんだけど」
「気のせい気のせい。ていうか俺、フリーター志望やし。行くだけ時間のムダっていうか?」
担任のこめかみの青筋がピキッと浮くのが目に浮かぶ。
「っと、そうや、忘れてた」
と、ポケットをごぞごそし始めた九条が、
「これ、やる」
こなれた手つきで錦の手首を掴むと、掌にころんと転がした。
「……消しゴムで作った、サイコロ?」
言語文化の授業中、何かしていると思ってたらこんなものを作っていたらしい。
小さな青い消しゴムにサイコロの目が彫られている。意外に丁寧な仕事で、何ならちょっと可愛い。
「賽は投げられたとは、既に運命は決まったのだからあとはもう身を任せて進むしかないという意味。なんかそういう切羽詰まった感じ、ええなあと思って作ってみた」
「……情熱のベクトルの方向性が間違ってるんじゃない?」
「あはは!やっぱオモロいツッコミするよな、ジブン」
関西人のツボはよく分からない。
サイコロも正直要らないので返したかったが、九条が楽しそうで何となく言いそびれていると、
「九条ーー!!」
「わ、斉藤や。なんかこっちに走ってくるやん!コレにてドロン(死語)。ごくろーさん、気ィつけてな!」
颯爽と逃げていく九条の背中を呆れながら見送った。
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斉藤先生の声は子安さんですw