この恋、上方修正銘柄です!

1-3 亀に話しかける女

1-3

 都心の一等地にある都市銀行の本店ビル。
 1階フロアは錦が所属する営業部で、法人取引や窓口業務を行っている。ちなみに営業部部長は、支店でいう支店長に当たる役職だ。
 上の階は人事部や審査部、資金証券部など部署別に分かれていて、各フロアにはセキュリティゲートが設置されている。

 地下の食堂は一昨年、お洒落なカフェ風にリニューアルされた。本日のおすすめランチを選んで席につき、黙々と食べる。
 昼の休憩時間は1時間と就業規則に謳われてはいるものの、実際はせいぜい30分。忙しければ食べ損ねることもある。食事が済んだらロッカールームで簡単にメイクを直し、職場に戻るのが日々のパターンだ。

 部屋に入ると6畳程の休憩スペースで、富小路たちが話に花を咲かせていた。
 ポーチからコンパクトを取り出し、鏡を見ながらパウダーでテカリを抑え、リップをサッと塗り直す。
「椅子にかけてある上着のタグ見たら、ブリオーニだった」
「なにそれ、高いんですか?」
「イタリアの高級ブランド。70万以上はするね」
「わ、セレブ!実家も太そう〜」
「彼女いるか、誰かリサーチしました?」
「あんな超優良物件、もしフリーなら奇跡中の奇跡でしょ」
「結婚したら海外暮らしかあ、憧れるー」
 尽きない会話に、お先ですと小さく声を掛けて午後の仕事に戻った。

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