この恋、上方修正銘柄です!
巨大な施設には、主にファミリー層をターゲットにした様々なショップが入っている。
昼食や休憩をはさみながら、午後からもあちこちのテナントに足を運んだ。
「さてと。ひとしきり見終わったところで本日のメインイベントや。ヒルトンホテルで開催される竣工記念パーティーに出席するで」
「お疲れさまです。じゃあ、私はここで」
「おうおつかれ、ほなまた月曜日」
踵を返そうとした錦の腕を、九条が慌てて捉えた。
「って、何マジで帰ろうとしてんねん!高辻も行くに決まってるやん」
「本気なの?大体、何の準備もして来てないのに……」
「任せろ高辻、コンサルの腕の見せ所や!」
「関係ないし!」
そのまま手を引かれ、それらしいショップに連れて行かれ、幾つかワンピースをあてがわれる。
「ほら、これに着替えて。靴はこっちな」
渡されたのは、モーヴピンクのミモレ丈ワンピース。スカートは二色のチュールが重ねられていて、ふんわりとしたシルエット。上半身にはスパンコールがついているが、アンティークゴールドなので、変にキラキラせず落ち着いた雰囲気だ。
試着室から出て来た錦を見て、
「うん、まあこんなもんやろ」
「言い方!」
「さ、次はヘアサロンや」
レジでお金を払おうとすると、店員がにっこり笑って、
「会計は済んでおりますので。ありがとうございました」
「え?ちょ、ちょっと九条くん!」
同じくショッピングセンターに入っている美容院に連れて行かれ、メイクとヘアアレンジをされる。
「ヘルシーグロウ肌と濡れ感のあるアイメイクが今年のトレンドです」
髪型は、ひとつにまとめた髪を内側に入れ込んだスタイル。
「レイヤーの入ったミディアムロブの雰囲気を生かして、ゆるふわのギブソンタックにしてみましたー」
シルバーラメを乗せたホワイトベースのネイルが終わったところで、途中ふらりと出て行った九条がタイミング良く戻って来た。
「うわ、どっかのアイドルかと思った!」
カシャ、と1枚撮影されて、ん、と渡されたのは、有名ジュエリーブランドの紙袋。
開けてみると、ピアスとネックレスが入っていた。市場調査の一環だからと、さっき店を覗いた時にどれが好きか尋ねられ、答えた商品だった。
傍で見ていたスタッフが、明らかに営業用ではない表情と口調で呟いた。
「素敵な彼氏ですね、いいなあ」
「もっと言って下さい。この人、俺に対する評価が低くて」
「信じられない!逃がさないようにしなきゃ駄目ですよ!」
「……ご忠告、痛み入ります」
ぶぶっと腹を抱える九条を見て、ため息をついた。