この恋、上方修正銘柄です!
切り替えスイッチのオンオフが神レベルなことに感心しながら、専務と話す九条を眺める。
「……普通に会話してるし」
恐縮する様子もなければペコペコ頭を下げることもない。それどころか、親しげに肩まで叩かれている。さすが人たらし。
いつの間にかその周囲には大勢の人の輪が出来ているのも相変わらずだ。
隣に来た若く綺麗な女の子に何かを話しかけられて、長身をかがめて顔を近づけ答えている。昔から九条の回りにはいつも女子が居て、こういう場面も見慣れているはずなのに、何となく見ていられなくて目を逸らした。
豪華なパーティに地域の有力者達。場違い感は甚だしく、知り合いなんている筈もない。圧倒的な手持ち無沙汰。
こうなったらもう食べるしかないと決意して、料理が並んでいるテーブルに行って皿を手に取り、前菜からメインまで食べたいものを選んで載せていく。
「何か飲みますか」
清潔感のある若い男に声を掛けられ、
「じゃあその、スパークリングワインを」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
と、受け取ったところで、その男がホテルの従業員でないことに気がついた。
「あ、すみません、てっきりホテルの方かと思ってしまって」
「ハハッ!そんなにホテルマンぽいかな、僕。良かったら、向こうのテーブルで少し話しませんか」
「え、私とですか?」
「勿論ですよ。とても綺麗な方なので緊張するなあ。モデルさんですか?」
「と、とんでもない!」
「お近づきに名刺をお渡ししたいのですが、あいにく両手が塞がっておられるようなので」
左右の手から、流れるような動作でグラスと皿が奪われる。
「どうぞ、行きましょう」
「え、あの……!」
その時、ふいに後方から腕が伸びて来て。
「ごめんね、お待たせ」
と、肩を抱かれ後ろに引き寄せられた。
振り向くと真後ろに九条がいて、ぽかんとする男に対し、好戦的な視線を送っていた。
「僕の連れに何か御用でしたか」
「ああ、いえ……」
「その皿とグラスは差し上げます。僕らはこのあとゆっくり楽しむ予定なので」
丁寧だが刺のある言葉に察するものがあったらしく、
「し、失礼しました」
と、男はそそくさと去って行ってしまった。