この恋、上方修正銘柄です!

 写真もそこそこに、皿を取りどんどん料理を載せていく壬生を眺めていて、ふと思いつく。
「そうだ、壬生君。もし良かったら、後でサイン貰えるかな。同僚にファンだっていう人がいて」
「それって、川端のこと?」
 九条は露骨に嫌そうな顔をして、
「要らんやろ。そんなん高辻に近づく口実に決まってるやん。渉のファンなワケないし」
「そうかな。サポーターやってるくらいだから、ファンなんだと思うけど。っていうか呼び捨てだし」
「つーか、九条、本人目の前にして何気に失礼だよな」
「次のアクション起こしたろとか思わせるようなきっかけ与えてどうすんねん。ええから、渉も書くなよ。どうせフリマアプリに高額で出品されるだけやから」
「ハイハイ、分ーったよ」
 なんとなく、微妙な空気。
 困って周囲を見渡すと、シェフが切り分けている料理のコーナーが目に入った。
「私、あっちでローストビーフ取ってくる」
「ついでにオレの分も!」

 ローストビーフ待ちの短い列に加わって、小さく呟く。
「嫉妬?……いや、まさか、ね」
 自分が九条の恋愛対象でないことは、昔から知っている。充分過ぎるくらいよく分かっている。
 なら、独占欲?俺の部下に手を出すな、的な。
 いずれにせよ、この出向が終わればまた、九条は何のしがらみもなくアメリカに行ってしまうのだ。

 壬生は山盛りの皿を片手に、列に並ぶ錦へ目を遣ると、可笑しそうに笑った。
「オレさあ、ずっとオマエのこと、要領が良くて小器用な奴だと思ってたんだけど、そうでもなかったんだな」
 ブスッとした顔で、
「……どういう意味や」
「あ、また声掛けられてる」
 慌てて錦を確認する九条を見て、
「ハハッ、ウソだよ。中学からの付き合いだけど、九条が嫉妬してるとこなんて初めて見たわ。考えてみりゃ、やたら執着してたもんな。小川と二人で遊べばいいのに、わざわざ4人で行きたがるし。オレ狙いとかじゃなくてマジ助かった。いい加減、素直になれば?オマエら高校生かよ」
「なんやその、渉のクセに世慣れた顔で上から目線!こっちには止むに止まれぬ事情があるんや!何も知らんくせにムカつく!これでも食っとけ!」
「あーーナス入れんなーーー!!」

 ギャーギャー言い合う二人を遠くで見ながら、何やってんだかと呟いた。 
 テレビのインタビューでしっかりしたことを話す壬生は、すっかり大人になったと思っていたけど、中身はさほど高校時代と変わっていないらしい。

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