この恋、上方修正銘柄です!

7-3

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 駅のホームはひどい混雑だ。
 アナウンスによると、どこかの駅で人身事故があってダイヤが乱れているらしい。遅刻せず職場に行くためには乗らない訳にいかない。ほんの数駅の辛抱だからと、人の波に押されながら車内になだれ込んだ。

 反対の扉側まで押し流されたものの、思ったほどもみくちゃになっていないことに気付く。
 扉に手をつく長い腕。目の前にアイロンがパリッとかかった白いシャツ。
 見上げると、それは九条で。
「はよ。平気か?」
「……うん」
 自分の体を盾にして、錦を囲むように守ってくれている。

 ネクタイの結び目。厚い胸板。
 かすかに香水の匂いがする。甘過ぎないグリーンノート。
 この香りは知っている。
 瞬間、蘇ったのは、ホテルでの切羽詰った眼差しと、唇と手の感触。

 その時、電車がカーブで大きく揺れた。
 人の勢いに押された九条がバランスを崩し、錦の方へ倒れこんで来た。
 一気に増した密着度。
 この体勢、向こうは確実に錦の胸を感じている筈で。焦って体をずらしたら更に当たる結果になり、そこから身動きが取れなくなった。
「……ご、ごめん」
「いや、こっちこそゴメン……ラッキースケベみたいな展開で……」

 顔を見られなくて良かった。きっと今、真っ赤だと思うから。
 昔、九条と手を繋いだ時みたいに。
 

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