この恋、上方修正銘柄です!
ところが、5分経っても10分経っても、二人は帰って来ない。
「遅っそいなー、あいつら何しとんねん」
九条は文句を言いながら、辺りを見回して、
「なんかこの辺、めっちゃ人増えてきたし。探しに行きがてら、俺らもブラブラしよか」
その時、誰かが肩にぶつかって来て、よろめいた錦の腕を九条がさっと支えた。
「危ないな、ちゃんと前見て歩けっちゅーねん。大丈夫か?」
「あ、ありがとう……」
ん、と錦の前に、掌が差し出される。
「なに、刺でも刺さったの?」
「そうそう人差し指の先がさっきからチクチクして、ってなんでやねん!ほら……手、貸して」
「ええっと、私が九条くんの手助けをする?」
「うん、俺には高辻の力が必要やねん。って、違っがーう!……わざとなん?わざとやろ」
首を傾げた錦にしびれを切らした九条が、半ば強引に錦の右手を取った。
「……高辻まで、迷子になったら困るから」
かあっと顔が熱くなる。
「あー、そんな照れられると、なんかこっちまで調子狂うから……」
ふいと前を向いて歩き出した九条の背を追うように、人混みの中を進む。
さっき垣間見た九条の頬が赤かった気がしたが、多分気のせいだ。手を繋ぐ位で、しかも相手は自分なのだ。九条が照れる筈がない。
クリスマス、錦の家に泊まることにして欲しいと綾乃から頼まれた。以前九条が友達に話していた下半身事情から察するに、つまりはそういうことだろう。そういうこととはどういうことかと聞かれても、そういうことよとしか言えないけれど。
とにかく、さりげなく助けてくれることも手を繋ぐことも、九条にとっては何てことないスキンシップに違いない。
けれど自分は……。
こんな些細な事ですら、どうして良いか分からなくなる。
立ち止まった錦に気付いて、九条も足を止める。
空いている左手で、そっと繫がれた手を解いた。
「平気。一人で、歩けるから……」
恋愛に免疫のない自分には、無理だ。
うつむく錦を見下ろす九条は、少し怒っているように思えた。だから九条がくるりと背を向けた時、一人で行ってしまうのだと思った。
「……ジャケットの裾」
「え?」
「それくらいやったらええやろ。はぐれんように、ちゃんと持っとき」
服の裾をそっと掴むと、九条がゆっくり歩き出す。
何故だか無性に泣きたくなった。